2004 Fiscal Year Annual Research Report
神経因性疼痛における神経幹細胞移植による脊髄の細胞再生と機能再建
Project/Area Number |
15390475
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Research Institution | YAMAGUCHI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
石川 敏三 山口大学, 医学部, 教授 (90034991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊吹 京秀 京都府立医科大学, 大学院, 講師 (90232587)
古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90159129)
塚原 正人 山口大学, 医学部, 教授 (20136188)
岡野 こずえ 山口大学, 医学部, 助教授 (50160693)
松井 智浩 山口大学, 医学部, 助手 (50314828)
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Keywords | 痛み / 脊髄細胞 / 神経可塑性 / グルタメート神経 / 神経栄養因子 / アポトーシス / 初期癌遺伝子発現 |
Research Abstract |
神経因性疼痛の治療は極めて難治性である.末梢-中枢知覚神経系のシグナル変調,とくに脊髄神経可塑性の変調は傷害された脊髄細胞の再生・分化誘導に密接に関与することから、細胞再生能をいかに高めるかが治療の重要な課題とされる。本年度は、細胞移植を含む細胞分子生物学的解明に向けた理論的基盤を得ることを目的に検討した。 その結果、 1)神経栄養因子と細胞再生:細胞外マトリックスの果たす役割:(1)脊髄髄腔内TNF-a注入や末梢4methylcatechol投与で痛覚過敏が起き、その作用はそれぞれ抗TNF-a、抗NGF投与で軽減しうる、(2)坐骨神経損傷部への磁気刺激が痛覚過敏を軽減し、その作用は局所抗NGF投与で軽減された。 2)胎児性脳由来neurosphere移植による脊髄再建:移植細胞と介在ニューロン間でのシナプス形成や感覚障害の軽減などの可能性を示す結果が得られた。(1)骨髄細胞(BMCs)より、増殖能力を旺盛に有する神経幹/前駆細胞、neurosphereを誘導し、その培養により自己移植が可能となった。(2)In vivoでも、完全脊髄損傷ラットモデルへこれらBMCs由来neurosphre移植を行い、痛覚機能異常の改善の可能性がみられ、電気生理学的な評価でも、運動機能に関係するcortico-spinalでのlong tract再生が起こる可能性が確認された。 末梢神経損傷後の痛覚過敏は、細胞内シグナリング活性化やapotosisに加え、脊髄後角の抑制性介在ニューロンの脆弱性が加わり、いわゆる脊髄神経系の可塑性を来す事により慢性期にはその病態はほぼ完成してしまう。現状の手法だけではその病態は不可逆性であるため難治であり、解決には根本的な発想の転換が必要不可欠であった。本研究は坐骨神経結紮後のラット熱性痛覚過敏慢性期モデルにおいて、くも膜下腔内へBMCs由来neurosphereを移植し、感覚機能の改善、移植細胞の動態とシナプス再構築、グリア系細胞の免疫組織学的評価などとあわせて、これまでの研究成果である(業績リスト)c-fos発現やapotosisといったシグナル伝達の変調や各種栄養因子mRNAの発現が可逆性なものとなりうるかどうかについて、繰り返し検討を重ねてきた。方法論的には、まだ大きな問題を残しているが、今までこのような慢性疼痛に対して、臨床応用を見据えた細胞移植療法の研究は皆無である。また、シグナリングなど分子生物学的な手法を用いて、in vivoにおいて再生のメカニズムを解明した報告はない。以上から、本研究結果は独創性に富みまた細胞操作の点で現状では先駆的、かつ必要性の高い研究内容であると期待される。
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Research Products
(8 results)