2003 Fiscal Year Annual Research Report
腎癌の予後を規定するシアル酸転移酵素の役割とその発現調節機構
Project/Area Number |
15390483
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
齋藤 誠一 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80235043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 明宏 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (70344661)
佐藤 信 東北大学, 医学部附属病院, 講師 (70282134)
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Keywords | シアル酸転移酵素 / stage-specific embryonic antigen-4 / ST3Gal II / 腎癌 / 精巣腫瘍 |
Research Abstract |
腎癌転移に関連した主要なガングリオシドであるstage-specific embryonic antigen-4(SSEA-4)の合成酵素が、シアル酸転移酵素のST3Gal IIであることを見いだした。すなわち、ST3Gal IIはCOS-1に対する一過性発現で、SSEA-4の細胞表面における発現を有意に増加させ、アイソトープ(^<14>C-CMP-NeuAc)を用いたシアル酸転移酵素活性測定において、ST3Gal IIは、SSEA-4の他、尖端構造が同じasialo-GM1,GM1aにもシアル酸を転移することが判明した。さらに、ST3Gal II mRNAをアンチセンスで安定発現させた腎癌細胞株ACHNより糖脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィーにて分析した結果も、アンチセンス導入ACHN細胞においてSSEA-4の量的レベルの低下がみられた。ST3Gal II mRNAレベルは、調べた腎癌細胞株8種類中7種類で高く、同一の症例で正常腎と比較できたヒト腎癌組織6例中6例で増加していた。このことから、ST3Gal IIは腎の癌化に関連しているものと考えられ、その後の悪性進展の基になっている可能性が示唆された。また、ST3Gal II mRNAをアンチセンスで安定発現させSSEA-4発現レベルが低下した腎癌細胞株ACHNは、ベクターのみを安定発現させたのと比較して、遊走能、浸潤能ともに低下することが判明した。以上のことから、ST3Gal IIは、腎の癌化・悪性進展への解明の他、SSEA-4が胚性幹細胞(ES細胞)のマーカーであることから、ES細胞研究や再生医学に役立つことが期待される。 SSEA-4は、精巣腫瘍の前癌病変とされるintratubular germ cell neoplasia unclassified(IGCNU)の8例全例において発現し、セミノーマにおいても9例全例で発現していることが判明した。このことは、IGCNUはセミノーマの前癌病変であるという仮説を支持するものと考えられた。一方、ノンセミノーマでは、胎児性癌の約半数でSSEA-4発現がみられ、セミノーマからノンセミノーマに脱分化する過程でSSEA-4の発現が低下するものと考えられた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Saito S, Aoki H, Ito A, et al.: "Human α2,3-sialyltransferase(ST3Gal II)is a stage-specific embryonic antigen-4 synthase"Journal Biological Chemistry. 278. 26474-26479 (2003)
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[Publications] Tokuyama S, Saito S, et al.: "Immunostaining of stage-specific embryonic antigen-4 in intratubular germ cell neoplasia unclassified and in testicular germ cell tumors"Oncology Report. 10. 1097-1104 (2003)
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[Publications] 齋藤誠一, 伊藤明宏, 佐藤信, 荒井陽一: "先端医療シリーズ24・泌尿器科「泌尿器科疾患の最新医療」 第1章 課題と展望 6.糖鎖生物学:最近の話題と尿路性器腫瘍"先端医療研究所. 40-46 (2003)