2003 Fiscal Year Annual Research Report
子宮内環境が出生後の各種疾患発症に及ぼす影響の基礎的ならびに臨床的研究
Project/Area Number |
15390504
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐川 典正 京都大学, 医学研究科, 助教授 (00162321)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
由良 茂夫 京都大学, 医学研究科, 助手 (60335289)
伊東 宏晃 京都大学, 医学研究科, 助手 (70263085)
刈谷 方俊 京都大学, 医学研究科, 講師 (90243013)
小川 佳宏 東京医科歯科大学, 医学研究科, 教授 (70291424)
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Keywords | 妊娠 / 胎盤 / 胎児発育遅延 / インスリン抵抗性 / レプチン / レジスチン / 生活習慣病 / 胎児プログラミング |
Research Abstract |
近年疫学的研究から、母体低栄養や妊娠合併症による子宮内胎児発育遅延(IUGR)児が、出生後に急速に体重増加するいわゆるcatch up期を経て成人後に肥満や生活習慣病を高率に発症することが明らかとなり、いわゆるfetal programmingという概念が提唱されつつある。 本研究では、胎児脂肪組織および胎盤に由来するエネルギー代謝調節因子の産生やそれらに対する感受性が変化することが、胎生期子宮内環境の悪化による成人後の肥満、生活習慣病発症に関与しているとの仮説を検証する目的で、本年度は以下の検討を行った。 1.ヒトIUGR児の生後の発育の調査 生後3年まで追跡可能であったIUGR児9例(平均-2.5SD:1パーセンタイル相当)の平均体重は生後1年では標準発育曲線の10パーセンタイル、生後3年で40パーセンタイルまでcatch upした。 2.妊娠マウスの摂食制限によるIUGRモデルの作成と新生仔におけるレプチン、レジスチン発現 (1)母獣摂食制限により胎仔の発育遅延を認め(体重は対照群の70.7%)、胎盤重量も87.7%と低値であった。マウス胎盤にはレプチン、レジスチン共に遺伝子発現を認めなかった。IUGR胎仔では皮下脂肪組織におけるレプチン、レジスチン遺伝子発現がそれぞれ対照群の48.7%、48.4%に低下していた。 (2)IUGRマウスの体重は出生後にcatch upし、生後3週齢では対照群と体重差を認めなかった。 (3)IUGRマウスの8日齢では皮下脂肪におけるレプチン遺伝子発現が263%と亢進し、高レプチン血症を示したが、レジスチン遺伝子発現は対照群と同程度であった。 (4)生後5,17週齢ではレプチン、レジスチンの遺伝子発現に有意差を認めなかったが、レプチン感受性の低下を認めた。 以上、胎児発育遅延児における成人後の糖・エネルギー代謝異常、肥満、高血圧など生活習慣病の発症には脂肪細胞および胎盤由来のレプチンが重要な役割を果たしていることが示唆された。従って、この母獣摂食制限によるIGURマウスモデルは、ヒトのIUGRに起因する成人病の研究に有用であると考えられた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] K Kakui, H Itoh, N Sagawa 他6名: "Augmented eNOS protein expression in human pregnant myometrium : Possible involvement of eNOS promoter activation by estrogen via both ERα and ERβ"Mol Hum Reprod. 10. 115-122 (2004)
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[Publications] K Kakui, H Itoh, N Sagawa 他6名: "Cyclic mechanical stretch and interleukin-1α synergistically up-regulate prostacyclin secretion in cultured human uterine myometrial cells"Gynecol Endocrinol. (in press). (2004)
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[Publications] MA Nuamah, N Sagawa 他6名: "Significant increase in maternal plasma leptin concentration in induced delivery : A possible contribution of pro-inflammatory cytokines to placental leptin secretion"Endocr J. (in press). (2004)
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[Publications] MA Nuamah, N Sagawa 他6名: "Free-to-total leptin ratio in maternal plasma is constant throughout human pregnancy"Endocr J. 50. 421-428 (2003)
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[Publications] S Yura, N Sagawa, 他6名: "Resistin is expressed in the human placenta"J Clin Endocrinol Metab. 88. 1394-1397 (2003)
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[Publications] N Sagawa, S Yura, 他8名: "Possible role of placental leptin in pregnancy -A review-"Endocrine. 19. 65-71 (2003)
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[Publications] 佐川 典正: "Annual Review 内分泌,代謝"金鐸康徳、武谷雄二、関原久彦、山田信博 編集、中外医学社. 304(80-92) (2004)