表面非晶質化による金属材料の生体適合性向上に関する研究

2003 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 15390581
• Research Category: Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 宇尾 基弘 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 助教授 (20242042)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 亘理 文夫 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (70158682) ; 横山 敦郎 北海道大学, 医学部・歯学部付属病院, 講師 (20210627)
• Keywords: レーザー急冷法 / 非晶質 / X線回析 / 窒化 / 金属材料 / 生体適合性

Research Abstract

材料の生体親和性は材料表層の物理・化学的物性に強く依存する。一般に金属の窒化物や炭化物は元の金属に比べて化学的に安定で、生体適合性も高いと考えられている。また金属は通常、結晶質であるが、一部の金属では溶融状態から超急冷することにより非晶質化することが知られており、非晶質金属では結晶質の場合と比べて種々の特性が向上することが知られている。
そこで本研究では、各種金属材料表面をレーザー照射により急熱・急冷し、表面を非晶質化及び表面に窒化物や炭化物などの薄い改質層を形成させることで、各種物性や生体適合性を改善させる目的で研究を行った。対象として用いた金属は歯科材料として一般的な、チタン及び金パラジウム銀合金である。これら金属材料にレーザー溶接機を用いて表面改質を行い、その変化をX線回析測定装置で解析した。
チタンの場合は不活性ガス中でレーザー照射をした場合には目立った変化はなく、大気中では表面に不定比の酸化物と思われる相が見られ、一部窒化物相が検出された。窒素中で行った場合には表面に主として窒化物が形成され、その厚みはレーザー出力の上昇と共に増加した。金属の窒化物は一般に化学的に極めて安定であり、生体適合性にも寄与することが期待される。
また金パラジウム銀合金では一部の試料で非晶質に近いX線回析パターンを示した。多くの試料では通常の鋳造を終えた状態の同合金が2相(Ag rich相とCu rich相)に分離しているのに対して、レーザー照射した部位では急熱・急冷により溶体化処理と同様の効果によって単相化することが判明した。光学顕微鏡による観察でもレーザー照射による単相化は確認された。通常、耐食性において複数相からなる合金では各相のイオン化傾向の違いにより合金内部で局部電池が形成されるため単相合金より耐食性が落ちるとされ、レーザー照射による単相化は耐食性の向上に寄与し得ると考えられた。

Research Products

• [Publications] Uo M., Berglund A., Cardenas J., Phl L., Watari F., Bergman M., Sjoberg S.: "Surface analysis of dental amalgams by x-ray photoelectron spectrometry and x-ray diffraction spectrometry"Dental Materials. 19. 639-644 (2003)
• [Publications] Uo M., Sjogren G., Sundh A., Watari F., Bergman M., Lerner U.: "Cytotoxicity and bonding properties of dental ceramics"Dental Materials. 19. 497-492 (2003)
• [Publications] Yokoyama A., Matsuno H., Yamamoto S., Kawasaki T., Kohgo T., Uo M., Watari F., Nakasu M.: "Tissue Response to a newly developed calcium phosphate cement containing succinic acid and carboxymetyl-chitin"Journal of Biomedical Materials Research PartA. 64A. 491-501 (2003)
• [Publications] Tani K., Watari F., Uo M., Morota M.: "Discrimination between composite resin and teeth using fluorescence properties"Dental Materials Journal. 22. 569-580 (2003)
• [Publications] Uo M., Watari F., Kohgo T.: "The application of X-ray scanning analytical microscope for the analysis of biological tissues"Journal of Dental Research. SI82. B-62 (2003)