2003 Fiscal Year Annual Research Report
円二色性測定による歯質骨格タンパク質―歯科接着剤成分相互作用の解析
Project/Area Number |
15390594
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
根津 尚史 九州大学, 大学院・歯学研究院, 助手 (40264056)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺田 善博 九州大学, 大学院・歯学研究院, 教授 (30038898)
|
Keywords | 円二色性 / コラーゲン / 二次構造 / 接着剤成分 / 変性 / 立体構造安定性 |
Research Abstract |
象牙質コラーゲンと同じI型ながら水溶性のウシ皮膚コラーゲン(CSC)を用いて、その二次構造が象牙質接着操作に関連する環境変化でどのような影響を受けるか、円二色性(CD)測定により調査した。象牙質に対してレジン系接着剤を作用させる過程でコラーゲンは、脱灰による低pH環境やモノマーおよびその溶媒である有機液体中にさらされる。 一定温度でCSC溶液のpHを段階的に変化させながらCDスペクトル測定を行った結果、pH4.5〜6の範囲で転移的な構造変化が認められ、その上下では状態は一定であった。転移領域はコラーゲンの等電点に対応することから、正味の電荷が正か負かで決まる二つの異なる2次構造の存在が示唆された。さらに、pHを上昇させる過程と低下させる過程でこの転移が可逆的に起こることも確かめられた。 また、接着モノマーの典型的な溶媒であるアルコールがCSCの構造安定性に及ぼす影響を、アルコールの鎖長と濃度を系統的に変えて調べた結果、一定温度では2次構造に顕著な変化は見られなかった。しかし、温度をスキャンさせながら行った測定で2次構造の転移が起こる温度(変性温度)は、アルコールの鎖長が長くなるのに比例して顕著に低下することを発見した。このことから、疎水環境では2次構造の変化なく構造安定性が低下することが明らかになった。 平成16年度は、引き続き低分子成分としてプライマーに含まれる各種塩類の影響を調べる一方、グラスアイオノマーセメントの主成分であるポリアクリル酸などの高分子酸とコラーゲンの相互作用に中心に調べる予定である。
|