Research Abstract |
本研究において我々は,in vitroでヒアルロン酸(HA)の低分子化を生じるモデルを用いた.まず,このモデルで実際にHA低分子化が生じているかを確認するため,培養軟骨細胞をヒアルロニダーゼ(HAase)で処置した後,培養上清中のHAの分子量を,現有するHPLCにて検討した.その結果,HAaseを添加していない正常培養軟骨細胞の培養上清中には1.0x10^5Da以下の低分子量壬仏は存在しなかったが,100unit/mlのHAaseを12時間処置した培養上清中には1.0x10^5Da以下の低分子量HAが存在することが明らかになった.なお,すべての実験には4週齢の雄性ウサギ膝関節より単離した初代軟骨細胞を用いた. 次に,HAaseが軟骨細胞におけるCD44およびmatrix metalloproteinases(MMPs)の遺伝子発現に及ぼす影響を検討した.0〜200U/mlのHAaseを0〜12時間作用させた後,total mRNAを抽出し,RT-PCR (Reverse transcription polymerase chain reaction)にてHAのレセプターとして知られるCD44,軟骨基質の分解酵素であるMMPsの遺伝子発現を検討した.さらに,抗CD44抗体存在下でのCD44,MMPs遺伝子発現についても検討を行った. 培養軟骨細胞を0〜200U/mのHAaseで12時間処置したところ,CD44,CD44v mRNAの発現は濃度依存的に増強され,100U/mlで最大となることが明らかになった.また,培養軟骨細胞を100U/mlのHAaseで0〜12時間処置したところ,CD44およびCD44v mRNA発現は,6時間で誘導が認められ,12時間で最大となることが明らかになった.さらに,MMP-1,-3,-9mRNA発現も100U/mlのHAaseを12時間処置することにより顕著に増強されたが,TIMP mRNAの発現は変化しなかった. HAaseによる軟骨細胞のCD44,CD44v mRNA発現誘導に対するCD44抗体の影響を検討した結果,CD44抗体は単独ではCD44,CD44v mRNA発現レベルに影響しなかったが,HAase存在下で,CD44抗体は濃度依存的にCD44,CD44vおよびMMP-1,-3,-9mRNAの発現誘導を抑制することが明らかになった. 本研究結果より,HAaseにより分解されたHAのフラグメントが,CD44を介して,軟骨基質分解酵素であるMMPの遺伝子発現を誘導し,関節軟骨破壊を惹起する可能性があることが強く示唆された.
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