Research Abstract |
ヒューマン・ケアリングを理念とした看護実践能力を育成する系統的な教育カリキュラムモデルの構築を最終目的とする研究の初年度にあたる今年度は,(1)カリキュラムの鍵となる概念である「ヒューマン・ケアリング」ならびに「看護実践能力」の概念分析,(2)ケアリングを基盤とした看護基礎教育を標榜する看護系大学のカリキュラム分析,(3)ヒューマン・ケアリングを基盤とする教育カリキュラムの評価尺度の開発に取り組んだ。 1.ヒューマン・ケアリングの概念は,道徳観,資質,態度,対人関係等の要素に分析されていた。また,看護実践能力については,資質か能力かといった議論があるなか,多様な構成要素が示されていた。一方,我が国においては,臨地における判断・行動能力ととらえられることが多い傾向にあることがわかった。 2.ケアリングを基盤とする看護基礎教育を行っている看護系大学のカリキュラム分析については,公表資料に「ケアリング」「ヒューマンケア」「癒し」などの用語が含まれた看護系大学21校を対象に,授業内容を把握できる資料の提供を文章で依頼し,8校より資料を収集した。その結果,大学の理念から授業科目に至るカリキュラムの全過程におけるケアリング概念の展開が読み取れたカリキュラムはなかった。ケアリングの概念は,教育理念等に暗示されている場合が多く,教員の認識により,系統的に教授されるには困難があること,指定規則との整合性もあり,ユニークな授業科目が組みににくいことが推察された。これを踏まえ,資料提供のあった施設に,カリキュラムにおいてどのようにケアリングを概念化し,教育の具体化しているのかについて,半構成的面接を行う予定である。 また,米国における看護教育カリキュラムの実際を把握するために行ったセイラム大学における意見聴取においては,一つの概念に基づいてカリキュラムを構成しても,個々の教員の理解や意欲により,一貫した運営が難しいことがわかった。三重県でのワトソン博士との会議では,カリキュラム構築に向けた研修や資料等の紹介を受けた。 3.ヒューマン・ケアリングを基盤とする教育カリキュラムの評価尺度の開発としては,ケアリング能力の育成を測定するCaring Efficacy Scaleを選び,海外留学経験をもつ看護研究者を含む4名で翻訳し,日本語を理解するネイティブスピーカーのチェックを受けた。本質問紙の,信頼性と妥当性確保のため,看護系大学卒業生230名程度を対象に,調査を行い,分析途上にある。
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