2004 Fiscal Year Annual Research Report
古代エジプトのマスタバ墓(イドゥート)の壁画保存のあり方の調査
Project/Area Number |
15401003
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
吹田 浩 関西大学, 文学部, 教授 (80247890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 文孝 関西大学, 文学部, 教授 (00298837)
西浦 忠輝 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 教授 (20099922)
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Keywords | エジプト / 文化財修復 / マスタバ / サッカラ |
Research Abstract |
2004年4・5月に、第2次調査をおこなった。先ず、壁画の状態をカメラ写真によって正確に記録する作業を昨年に引き続いて行った。また、床面の清掃を行った。当初は、流入した堆積土は2・3センチ程度と見込んでいたが、10センチにおよんだ。完全な状態に近い土器を数点回収した。剥落していた壁画片も数多く回収し、今後の復元のために写真撮影を開始した。 壁画の状態は、1935年の報告書に比較して相当に剥落が進行していることを確認した。注意すべきは、クラックの存在と浸水による損傷である。天井・壁・床に多くのクラックがあり、南面の壁のクラックは、1935年の写真と比較して成長していることは明らかである。北面にはかつての浸水のあとが明瞭であり、東のシャフト入り口上部も浸水による損傷と考えられるあとが見られる。乾燥地帯にあるとはいえ、何回かの豪雨があり、浸水したものと思われる。回収された壁画片は、1937年の報告書の写真によってある程度の復元が可能である。 化学分析(X線回析、岩石分析学、DTA分析、赤外線分析、断面分析法など)も昨年に引き続きおこなっている。温湿度計によるデータ収集も続けている。1次調査から2次調査のあいだの記録によれば、温度と湿度は極めて安定していることが確認された。 本調査がエジプトのギザ・サッカラ地域における壁画修復の初めての技術開発を行うものであることから日本国内で研究者の支援を得る体制を確立した。8月には、日本の専門家2名に現地で壁画の状態の確認をお願いした。母岩とプラスターの状態に対応する複数の技術開発が必要であるが、壁画が地下埋葬室という閉鎖空間であることもあり、日本式のフノリと和紙(あるいは、レーヨン紙)による壁画の引き剥がしの技術が有効であると思われる。また、「関西大学エジプトサッカラ地域古代壁画保存修復協力委員会」を10月に立ち上げ、専門家からの協力態勢を築いた。
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Research Products
(3 results)