2004 Fiscal Year Annual Research Report
アジアにおける手話言語とろう社会に関する社会言語学的研究
Project/Area Number |
15401015
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
加藤 三保子 豊橋技術科学大学, 留学生センター, 助教授 (30194856)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本名 信行 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (20079453)
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Keywords | シンガポールのろう者と手話 / タイのろう者と手話 / 聴覚障害児教育 / ろう者の高等教育 |
Research Abstract |
今年度はシンガポールとタイにおいて,それぞれの国の聴覚障害者団体の組織と活動,聴覚障害児(者)教育,手話言語の地位と役割,手話研究の動向に関する調査をおこなった。 シンガポールでは,赤十字社と厚生省によって1955年に聴覚障害者協会が設立された。当時、ろう児に対する教育と、ろう児をもつ親へのカウンセリングサービスは赤十字社がおこなっていたが、聴覚障害者協会の設立によってこれらの活動はより専門性を増し、ろう教育が充実してろう者社会がおおいに発展することになる。 同協会は1963年にシンガポールろう学校を設立し、以後ろう児教育が本格的に開始されることになった。シンガポールろう学校では当初、中国手話(上海手話)を指導言語としていたが、英語がこの国の公用語となるのにともない、ろう学校でもアメリカ手話を基礎にして「正しい英語を手話表現できる」ことが重視されるようになった。現在もろう学校ではこの教育法がとられている。 シンガポールで使用されるのはアメリカ手話が主流であるが、ろう者同士ではローカルな手話も使用している。今後はローカル手話の保存と研究が必要になるが、まだこの分野の研究者はいない。 タイでは、ろう学校同窓会が中心になって1984年に聴覚障害者協会が設立された。協会は政府からの援助金、個人の献金のほかに協会が販売する宝くじの収入によって運営されている。協会では一般の健常者と難聴者を対象に手話の学習コースを開き、手話通訳の養成にも力を入れ始めた。手話に関する政府の認識はかなり高く、手話に関心をもつ皇族からの助言もあって、1999年には政府が手話を公用語と定めた。 タイ手話は地域差が大きいため、標準手話の確定に向けての動きも活発である。手話語彙集や手話辞典の編集には、教育省や聴覚障害者協会、ろう学校の先生などが関わり、ろう学校教員用の手話テキストも発行している。最近では成人ろう者の高等教育にも力を入れ、ラシャスダス・カレッジ(1994年開校)では現在75人のろう学生が学んでいる。
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Research Products
(1 results)