2004 Fiscal Year Annual Research Report
バイリンガル社会の構築〜フランスの3つの地方語・少数語教育の現地調査
Project/Area Number |
15401019
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
寺迫 正廣 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (70150381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PUNGIER Marie-Francoise 大阪府立大学, 総合科学部, 講師 (30316020)
MARTIN Sylvie Marie-Noelle 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50263348)
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Keywords | フランス語 / バイリンガル教育 / 地方語 / ダイグロシア / アルザス語 / ブルトン語 / フラマン語 |
Research Abstract |
本研究はダイグロシア状況下にある少数言語のあり方を考えるため、フランスにおけるフランス語と地方語・小数語の教育の現状を、バイリンガル教育に焦点を当てて、実地調査するものである。平成15年度と平成16年度の2年間にわたって、研究代表者(寺迫)がドイツ国境地域アルザスを、研究分担者1(パンジエ)がブルターニュ地方を、そして研究分担者2(マルタン)がベルギー国境のノール県をそれぞれ調査対象地域として2年間に3回ずつ、現地を訪れ、公立・私立の幼稚園および公立小学校低学年のバイリンガルクラス訪問、それぞれの地域のバイリンガル教員の養成機関、言語教育政策を担うRECTORATと称される教育行政機関、さらには民間団体がその地方の言語を主たる教育言語として運営する民間学校の教育状況(これは特にブルターニュ地方)等について、アンケート調査および聞き取り調査を実施したものである。また、この間、平成15年10月には、フランス教育省が主催して行われた「第1回フランスの言語に関する全国シンポジウム」(パリ、科学産業都市、600人)に参加し、主要な地方語のみならず、公教育の対象にもなっていない小さな(話者数から見て)言語についても、その維持発展の運動を展開していること、「共和国の言語はフランス語である」と憲法に規定した国の政府が、そうした全国のさまざまな言語の現状に関する訴えに耳を傾ける姿勢を持ちえていること(地方語教育の担い手の中には、「多様性尊重」政策のシンボル的会合に過ぎないと覚めた目で見る人々も存在する)を示すシンポジウムであり、日本の状況との格差を痛感させられた。日本語単一主義の思想の喧伝は政府レベルでは行われなくなったとはいえ、日本の現状は日本語を相対化する努力は行われていないことを考えれば、フランス語至上主義的な政策から転換したフランスの姿勢は注目に値すると言うべきであろう。この全国シンポジウムから1年後の平成16年10月にはアルザスのサヴェルヌで民間団体<バイリンガル教員の会>主催による「第1回バイリンガル教員全国シンポジウム」が開催され、70名程度が参加し、1年前の文化省主催と同じテーマで3日間にわたる議論が繰り広げられた。研究代表者はこのシンポジウムにも参加することができ、アルザスのみならず、全国の現場の教員の問題提起と、その解決へ向けた議論に耳を傾けることができた。ヨーロッパ連合という国家を超えた統合体が現実に動き出した今、国語の影になっている小数語の教育問題にこれだけのエネルギーが注げる状況のみを見ても、「成果報告書」に記したさまざまな困難が現前するとはいえ、フランスのケースに学ばねばならぬことが多いことが明らかになったと考える。
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Research Products
(4 results)