2004 Fiscal Year Annual Research Report
グローバルリサイクルシステムの構築に関する研究-日中の家電リサイクルシステム構築をケースとして
Project/Area Number |
15402004
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
周 い生 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80319483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲上 健一 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (10109077)
小幡 範雄 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70224300)
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Keywords | グローバルリサイクルシステム / 地球環境 / 循環型社会 / 廃棄物 / 持続可能性 / グッズとバッズ / 日本と中国 / 家電リサイクル |
Research Abstract |
今年度は、日本国内のアンケート調査と中国での現地調査を通じて、廃棄物のグローバルリサイクルシステムに関してAHP(階層分析法)とコンジョイントによる分析評価を行い、以下のような成果を得ることができた。 1.廃棄物の国際間リサイクルがもたらす影響について、経済性、環境性、社会性の3つの性質から費用便益による評価法について考察を行い、また、アンケート調査を通じて、消費者の選択実験によるリサイクル行動評価からリスクや価値観といった社会性要因の経済的評価を行い、それに加え、廃棄物を輸出することに対する消費者の抵抗感を明らかにした。廃棄物を国際間リサイクルすることによって、市場から外部化されている影響は環境面だけではなく、輸入国と輸出国の両側においてリスクや価値観、倫理といった実体の無い社会的インパクトがあると考えられ、結果として社会性便益や費用を個別に推定することはできないが、国外輸出には効用を低下させる要因があることが確認された。また、排出抵抗をもたらす要因としては、不法投棄といった不正処理の危険性や輸入国側の労働環境、輸入国側の生態系の破壊が影響していることがわかった。また、品質や、労働環境など廃棄物輸出におけるネガティブ面に関する「輸出先社会的規範評価」、廃棄物問題に関する「廃棄物問題認知」、安定性や危険性、受入抵抗といった「輸出リスク評価」、輸出先の生態系や水質土壌汚染といった、「輸出先環境コスト評価」と因果関係があるとの結果になった。 2.グローバルリサイクルを透明性のある経済行為として成功させるには、関係する人々の意見を調査し成功のための環境作りをする必要がある。本研究では廃家電製品を事例として、家電リサイクル工場従事者、環境問題専門家を対象として、グローバルリサイクルシステムの環境作りに配慮すべき評価項目を、AHP(階層分析法)を用いて分析した。グローバルリサイクルシステムを構築する上で、廃棄物を再生資源として利用したときの製造エネルギーが少なくてすむとの効用と、生産国責任によるリサイクルの重要度が高いことを明らかにするとともに、多国間貿易下でのリサイクルに関する拡大生産者責任の考え方について見解を示した。 3.今後、受入側の社会的インパクトについても研究が行われる必要があり、社会的に受容された上で資源循環が行われることが望ましい。本研究は、社会性費用と便益の存在を、選択型コンジョイント分析を用いることで実証を試みつつ、また排出抵抗となる心理的規定因を明らかにした。実際は、国内で発生する環境汚染と国外で発生する環境汚染による効用水準の低下は異なる可能性がある。また、コンジョイント分析には、心理学の視点から属性の数に限度があり、汚染についてはあるか無いかの二値変数を用いたが、消費者は汚染の程度によりその支払意思額が異なると考えられる。また実際には、国際的な資源循環はすでに始まっており、また費用便益の視点から完全に分析するには、必要な情報が数多くまた研究としても容易に達成できるものではない。いずれにせよ、輸入国及び輸出国の両国において社会的純便益が増加する選択肢が選ばれることが望まれる。
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