2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15402016
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
衛藤 幹子 法政大学, 法学部, 教授 (00277691)
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Keywords | シティズンシップ / 市民社会 / ヴォランタリー組織 / ジェンダー / 女性運動 / エージェンシー(民主主義のエージェント) / 直接的政治参加 / 福祉国家 |
Research Abstract |
市民社会を活性化し、民主的な政治制度を強化するエージェントとしての女性ヴォランタリー組織に注目し、主にイングランドに本拠を置く12団体をインタビュー等により調査した。 まず、英国の女性団体の多くは、大きく二つの包括組織に統合されている。一つは、所謂第一波フェミニズムに起源を発する英国女性委員会(National Council of Women Grate Britian, NCWGB、1895年設立)で、約80団体が連携団体として登録されている。もう一つの女性組織全国連盟(National Alliance of Women's Organization, NAOW)と呼ばれる第二波フェミニズムの流れを汲む団体には、120ほどが登録されている。NCWGBの連携団体が、女性職能団体や専門職女性の団体など伝統的な女性団体であり、組織規模も概して大きいのに対し、1989年に設立されたNAOWの連携団体は、一般に小規模で、第二波フェミニズムを契機として生まれた「新しい」女性運動組織である。つまり、この二つの包括組織は、フェミニスト運動の二つの流れ((1)リベラルな権利追求運動と(2)ラディカルな女性解放運動)を代表している。しかしながら、この両者のイデオロギー的な相違は、今日ではそれほど重要ではなく、両組織は、協力して、英国政府、EU議会、さらには国連に向けたキャンペーン、ロビー活動を行なっている。 ところで、こうしたキャンペーンやロビー活動において、重要な役割を果たしているのが、「女性全国委員会(Women's National Commission, WNC)」と呼ばれる組織である。WNCは、そのスタッフは公務員であり、政府の補助金によって運営される内閣府の下部組織であるが、英国の女性組織を束ね、その声を政府の女性政策に反映させるという目的によって運営されている。つまり、英国の女性ヴォランタリー組織においては、個々の女性団体がほぼ二つの包括団体にまとまり、最終的にWNCの下に集結するという図式を描くことができる。そして、英国の女性政策の形成過程では、個々の女性団体から上がってきた意見や提案は、NCWGBとNAOWを通って、WNCに吸い上げられ、WNCが取りまとめて、政府に提起するというプロセスが規定化している。 こうした組織化されたキャンペーンやロビー活動に問題が全くないわけではないが、女性の声を政府に到達させ、公共政策に反映させる一つの効果的な方法だと考えることができる。
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Research Products
(1 results)