2004 Fiscal Year Annual Research Report
西欧諸国における地域分権・地域主義の動向とその社会・文化的影響
Project/Area Number |
15402037
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
宮島 喬 立教大学, 社会学部, 教授 (60011300)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 聖 女子美術大学, 芸術学部, 教授 (20180995)
中野 裕二 駒沢大学, 法学部, 教授 (10253387)
佐久間 孝正 立教大学, 社会学部, 教授 (80004117)
竹中 克行 愛知県立大学, 外国部学部, 助教授 (90305508)
若松 邦弘 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (90302835)
|
Keywords | ヨーロッパ / EU / 地域分権 / カタルーニア / ウェールズ / アルザス / ブルターニュ / 言語文化 |
Research Abstract |
ヨーロッパ統合は2004年5月、東方10カ国への拡大という新しい局面を迎えたが、本研究は、旧EU、すなわち西ヨーロッパに焦点を合わせて、1990年代から続いている地域と文化の再編制の諸局面を捉え、調査した。 ヨーロッパ統合の下では、主権国家の枠組みが徐々に相対化されるとともに、「地域」(region)あるいは「市町村」(各国によって呼び方は多様)が自立的枠組みとして重視されるようになった。その具体的様相が、フランス、スペイン、イギリスについて明らかにされた。すなわち中央集権の性格の強かったフランスにおける80年代からの地方分権化改革はコルシカのような自治的地域まで生んだ。また、スペインでは、80年代から自治共同体の発展がみられ、カタルーニアのような言語、教育、文化において高度な自治を享有する地域を生んでいる。他方、イギリスは、分権性、地域の独自性の高い国であるが、しかし従来「地域」という明確な制度枠組みを欠いており、これをたとえばイングランド内で構築しようとする改革が行なわれている。ただ、各国ともそれぞれに問題はあり、フランスではなお地域の権限の拡大は他国にくらべ困難であり、スペインでは自治共同体の内部の行政の再編や連係という課題が大きく、さらにイギリスの場合、イングランド内の地域の構築がはたして文化的独自性の形成と相伴うのかという問題がある。 一方、歴史的な独自言語地域であるウェールズ、ブルターニュ、アルザスの言語状況の調査の結果として、EUの下でこれらの言語の振興の努力が容易になっているという事実が確認される(特にウェールズの場合)。また、EUの東方拡大の影響を直接に受けるものにドイツ東部国境のソルブ語がある。ソルブ後の使用状況の調査では、同言語(スラブ系言語)が国境を超えて地域をつなぐ言語に再生をみつつあることが確認された。 1990年代からの西欧の地域の変容、再編の興味深いもう一つの側面は、大都市圏に見られる文化変容である。それは特に、都市マイノリティの中心をなす移民の定住、世代交代の結果としての新しい若者文化の展開である。調査の結果からは、新しい文化融合を実現しつつ、反差別への志向をもつこの文化は、今後のヨーロッパで重要性を増して行くと展望される。
|
Research Products
(1 results)