2004 Fiscal Year Annual Research Report
人為的活動により環境中に放出された水銀の挙動とその周辺環境への影響評価
Project/Area Number |
15404003
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (60217552)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井村 隆介 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (40284864)
宮本 旬子 鹿児島大学, 理学部, 助教授 (40244222)
松山 明人 国立水俣病総合研究センター, 国際研究部, 主任研究員
赤木 洋勝 国際水銀ラボ, 所長 (30083744)
大木 公彦 鹿児島大学, 総合研究博物館, 教授 (90041235)
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Keywords | 水銀の環境影響 / スロベニア / イドリヤ / メチル化 / スペシエーション / 蛍光X線分析 / 鉱山活動 |
Research Abstract |
前年度、水銀鉱山付近を流れるイドリヤ川に沿って約40km下流まで、10kmごとに4箇所試料採取地点を設定し、河川水、土壌、河川底質、植物中の水銀濃度及び化学形の変化を追跡した。分析の結果、鉱山に最も近い地点において、水銀濃度及び化学形の急激な変化が起こっている事が示唆された。 本年度、7月にフィールドであるスロベニア共和国において、水銀に関する国際学会(7^<th> ICMGP)が開催された際、研究成果の一部を発表するとともに、海外研究協力者と前年度の結果を踏まえ、綿密な打ち合わせを行い、9月21日〜10月2日、本年度の調査を実施した。水銀鉱山を中心に上流から約1-2kmごとに5箇所の試料採取点を設定し(Sts.1-5)、水銀鉱山至近における水銀挙動を連続的にとらえることを試みた。対象は、河川水、河川底質及び河川周辺土壌とし、河川水では、総水銀(T-Hg)、メチル水銀(MeHg)、無機水銀イオン(Hg^<2+>)、溶存性原子状水銀(Hg^0)の測定を行った。底質及び周辺土壌は、T-HgとMeHgの定量を行うとともに、蛍光X線分析装置を用い、底質及び土壌の構成・由来についても検討した。 河川水中T-Hgは、水銀鉱山に最も近い採取地点(St.2)とその一つ下流の地点(St.3)でほぼ等しく、最も高い値を示した。その一方で、MeHg濃度は、St.3が最も高く、河川水がわずかに流下する間の急激なメチル化の進行が示唆された。また、Hg^0及びHg^<2+>は、St.2で最も高い値を示しており、それぞれの化学種の挙動の違いが明確に示された。これはメチル化に至る水銀の化学形変化についての重要な知見となろう。蛍光X線分析装置による分析結果より、イドリヤ周辺においては、底質はほとんど石灰岩(ドロマイト)であり、そこに、ケイ酸塩を主体とする土壌とが混合することで、沿岸土壌が構成されるという比較的単純な系を形成していると考えられることから、今後、土壌・底質の生成過程と水銀の移動・由来についての評価が可能になると期待できる。
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Research Products
(5 results)