2003 Fiscal Year Annual Research Report
Ficus属樹木(絞め殺し木)の締め付け力発生に関する組織力学的調査
Project/Area Number |
15405015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥山 剛 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (00023482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 正人 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (30242845)
山本 浩之 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (50210555)
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Keywords | 絞め殺し木 / FICUS / 気根 / 成長応力 / ゼラチン繊維 / Ficus elastica / ミクロフィブリル / 解放ひずみ |
Research Abstract |
熱帯生のクワ科FICUS属の多くは、樹木(ホスト樹木)に寄生し、鳥、サルによって運ばれた実がホスト樹木の樹上で発芽し、気根を垂らして成長する。その気根は互いに癒合し、ホスト樹木を絞め殺す、そのため絞め殺し植物(Strangler)とよばれ、植物学的にはよく知られている。 この研究では、熱帯生FICUS属の生存戦略としてホスト樹木を絞め殺すメカニズムを組織力学的に説明することを試みるものである。 今年度は、フィリッピン大学に自生するFicus elasticaを試験樹木に選定した。平成15年8月15日〜22日に現地で選木し、各種成長段階(気根直径、気根同士の癒合状況)が異なる気根にストレインゲージを貼付し、応力解放時のひずみを測定した。ひずみ測定部位の試料を名古屋大学に持ち帰り、組織観察と、X線回折によるセルロースミクロフィブリル傾斜角度、ヤング係数を測定し、気根の発生応力の推定と、気根の細胞壁構造の応力発生への寄与について考察した。 その結果以下の知見が得られた。 1、気根同士を癒合する過程にある直径0.8cm以下の細い気根は、大きな軸方向引張応力を発現している。解法ひずみにして0.3%にも達した。この値は、一般広葉樹の引張あて材部に発現している成長応力と比べても大きい値である。ヤング率と断面積から計算される細い気根の発生力は2〜3Kgになることがわかった。一方、直径が1cm以上になると解法ひずみは0.1%以下と小さくなるが、断面が大きくなるため締め付け力は20-30Kgと大きくなる。 2、以上の大きな応力はゼラチン繊維の発現によって発生する。気根の直径が小さい(0.8cm以下)では、MFAが小さいゼラチン繊維が気根断面に同心円状に発達し大きな軸方向引張応力を発現する。気根断面が大きくなるにつれて正常な木部繊維が形成され通常の大きさの軸方向引張応力を発現している。
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