2005 Fiscal Year Annual Research Report
Ficus属樹木(絞め殺し木)の締め付け力発生に関する組織力学的調査
Project/Area Number |
15405015
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 浩之 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50210555)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 正人 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (30242845)
|
Keywords | 絞め殺し木 / 引張あて材 / ゼラチン繊維 / 負重力屈性 / 成長応力 / イチジク科 / 生存戦略 / ゼラチン繊維 |
Research Abstract |
これまでに,絞め殺し植物(Strangler plants)として知られる熱帯性Ficus属樹木の支柱根が,ホスト樹木(宿主)を締め付ける力を現地で実測し,試験体を持ち帰ったが,その組織力学的考察から,樹木二次木部における成長応力発生による絞め殺し植物の生存競争の多様性を,力学的戦略という観点から検討した. Ficus elastica, Ficusbenjaminaの個体を対象に調査を行なって来たが,細い気根に発生する大きな軸方向引張り応力が,ゼラチン繊維の出現率,およびゼラチン層発達率(厚さ,形態)と強い正の相関関係にあることから,G層(G繊維)の形成が大きな軸方向引張応力の発生に関わっているものと結論された.なお支柱根の直径が大きくなるにつれて発生する引張応力も減少するが,それは茎の肥大成長とともにG繊維形成が停止するためであることを突き止めた.細い茎(支柱根)はその張力を利用して相互の気根同士を束ね、さらに癒合を促進するものと推察される。径が太くなり、直径15cm内外に達し,主幹の成長応力と同程度になるころには癒合は完全に停止することも確かめられた. さらに,ミクロフィブリル傾角の測定、化学成分分析、セルロース結晶化度の測定を実施し、細胞壁力学モデルによるシミュレーションをも併用して、支柱根における引張応力発生機構を検討した.その結果,支柱根に出現するG繊維は双子葉樹木が形成する"引張あて材"そのものであり,成長応力発生のメカニズム自体は,セルロース引張応力仮説で説明可能であることが明確となったが,通常の樹木シュート(枝,幹)の場合とは異なり,負重力屈性発現を目的としなくても,顕著な,しかもバイオメカニックス的な目的性を持って"引張あて材"が形成されるという事実は極めて興味深い発見である.
|
Research Products
(2 results)