Research Abstract |
(1)ミバエ誘引性Bulbophyllum属ラン科植物の花器構造の機能解析 東南アジアの熱帯雨林域た自生するミバエ誘引性Bulbophyllum属ラン類(ミバエラン)数種の可動式花器構造の機能について組織形態学手法と画像解析,力学的解析により調べた.Bulbophyllum apertumにおいては,三角形に張り出してバランスを保っているlipの付け根に位置する蝶番状の構造hamulusが,ミバエの着陸により,テコの原理で一方に押し出され,この弾みで花粉塊が突出し,バランスを崩したハエの背中に付着するプロセスが判明した.Bulbophyllum cheiriの場合は,滑り台式機能を備えたシーソーとも言える可動式lipが突然反転したときに,ハエが倒立のまま受粉カラム内に一時的に閉じ込められる構造になっていることが判明した. (2)ミバエ類誘引性Bulbophyllum属ラン花香成分の花器内分布 上で採集したBulbophyllum apertumのラン花組織をlip,column,medial sepal,petal,lateral sepalsの5部分に分離し,ガスクロマトグラフィー質量分析等により分析し,ミバエ誘引成分の分布解析を行なった.その結果,raspberry ketoneはlip組織のみに集中分布し,ウリミバエ種群の誘引行動プロセスを裏付けることができた.Bulbophyllum cheiriにおいては,花器構造のすべてに誘引物質methyl eugenolを含有し,その濃度勾配によって,唇弁上部に誘導することが示唆された.今後,ミバエによる花粉塊剥離後の誘引物質の動態(経時変化)について解析する必要がある.
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