2004 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジア熱帯林の森林断片化による遺伝的多様への影響評価
Project/Area Number |
15405026
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
津村 義彦 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 室長 (20353774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 尚樹 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 主任研究員 (90343798)
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Keywords | 熱帯林 / フタバガキ科 / 森林断片化 / 遺伝的多様性 / 個体密度 |
Research Abstract |
マレー半島アンパン森林保護区で、森林の断片化にともなう遺伝的多様性の劣化状況を調査するために、断片化された森林の中心部と周辺部でそれぞれ母樹及びそれらの実生を採取して、8遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝的な多様性の比較を行った。 マレー半島のアンパン森林保護区でフタバガキ科樹木であるShorea lepurosulaを対象に林縁部で6母樹、中心部から8母樹からそれぞれ30個体以上の実生を収集した。これらからDNAを抽出し、8遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝子型の決定を行い遺伝的多様性の比較を行った。他殖率は林縁部で0.57〜1.00で平均値は0.93、中心部は0.96〜1.00で平均値はほぼ1.00に近い値をしめし、林縁分の1母樹を除いては高い他殖率を示した。これはこれまでに報告されているフタバガキ科樹木の他殖率と同じような値であった。林縁部と中心部で実生群の保有している対立遺伝子数が異なり、林縁部の方が明らかに少ない値を示した。実生段階での花粉親から受け取った対立遺伝子数の平均値は林縁部で6.38、中心部で6.81であった。また実生段階での稀な対立遺伝子数は林縁部で3.33、中心部で5.50であった。これら二つのグループの母樹個体間での遺伝的多様性には大きな違いはみられなかった。このことは林縁部の母樹が受け取れる花粉が限られた花粉親からしかこないことを意味し、林縁部での将来の遺伝的多様性の減少を示唆するものである。この傾向が一般的であるかどうかを他の集団でも調査する必要があるため、低地フタバガキ林であるパソ森林保護区で同様の調査を行う予定である。
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