2003 Fiscal Year Annual Research Report
ヒラメ貧血症の原因寄生虫ネオヘテロボツリウム・ヒラメの起源の解明
Project/Area Number |
15405027
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 和夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (20092174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
良永 知義 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (20345185)
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Keywords | ヒラメ / 貧血症 / 寄生虫 / Neoheterobothrium / 単生類 / 起源 / サザンフラウンダー / サマーフラウンダー |
Research Abstract |
平成13年度および14年度の予備的調査において、米国ノースキャロライナ州で漁獲された大西洋産サザンフランダーからネオヘテロボツリウム属虫体15虫体を得た。 この大西洋産サザンフラウンダーのネオヘテロボツリウム属7虫体と日本国内のヒラメから得たネオヘテロボツリウム・ヒラメ17虫体について、形態学的比較を行った。比較のための計測形質としては、全長、固着盤と本体を結ぶ峡部の長さと幅、本体の長さと幅、固着盤の長さと幅、咽頭の長さと幅、口の大きさ、雄性交接器の長さと幅と鉤の数、鉤の大きさ、口吸盤の長さと幅、精巣の数、第1把握器〜第4把握器の長さと幅を測定あるいは計数した。 これらの測定値と体長の関係について、サザンフラウンダーの虫とヒラメの虫の2群間で共分散分析を行ったところ。咽頭の大きさにわずかな違いが検出されたものの、他の形質に有意な差は認められず、この2群は同一の種に属することが示唆された。 さらに、サザンフラウンダーの虫8虫体と日本国内のヒラメから得た虫28虫体を用い、SSU rRNA, ITS1,5.8S rRNA領域,ITS2領域の塩基配列、ならびにミトコンドリアのCOI領域の部分塩基配列を決定した。その結果、群間の変異はそれぞれの郡内の個体間変異の枠内にとどまり、この2群間に差は認められなかった。以上の形態学的・分子生物学的結果から、サザンフラウンダーに寄生する虫体と日本のヒラメに寄生する虫体は同種であると判断された。 しかしながら、米国産サザンフラウンダーから得られた虫体数が少ないため、さらに多くの虫体を採集する必要がある。また、サザンフラウンダーの虫体はやはり米国産のサマーフラウンダーに寄生するネオヘテロボツリウム・アフィネと同種であるという報告があり、ヒラメおよびサザンフラウンダーに寄生する虫体とサマーフラウンダーに寄生する虫体について分類学上の疑問が生じた。 これの問題を解決するため、15年度はノースキャロライナ州において本調査を行い、サマーフラウンダーから2虫体、サザンフラウンダーから約50虫体を採集することができた。16年度は、これらの虫体を用いて、さらに形態学的、分子生物学的比較を行う予定である。
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