2005 Fiscal Year Annual Research Report
中国の慢性ヒ素中毒患者の生体内NO産生低下と酸化ストレスを改善するための介入研究
Project/Area Number |
15406004
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
熊谷 嘉人 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (00250100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 博 聖マリアンナ医科大学, 予防医学, 助教授 (90081661)
吉田 貴彦 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90200998)
林 登志雄 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80303634)
石井 哲郎 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (20111370)
角 大悟 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (30400683)
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Keywords | ヒ素 / 井戸水 / 介入研究 / 一酸化窒素 / 末梢血管障害 / 慢性中毒 |
Research Abstract |
東アジア地域における井戸水を介した慢性ヒ素中毒は広範であり、その曝露人口は3,000万人を超える。我々は中国内モンゴル自治区の慢性ヒ素汚染地域における断面調査において、高濃度のヒ素を含む井戸水を10年以上飲水した住民の生体内一酸化窒素(NO)の産生量は対照群(平均値のヒ素濃度は0.02ppm)の約半分まで低下していることを明らかにした。そこで、中国の環境基準値(0.05ppm)以下の井戸水を1年間慢性ヒ素中毒患者に飲水させることで、低下した生体内NO産生量は改善されるか否かを調べた。研究対象者は内モンゴル自治区包頭市の慢性ヒ素汚染地域に住む男性24名および女性30名。ヒ素の曝露期間はおよそ10年。このヒ素曝露群が使用した井戸水中平均ヒ素濃度は0.18ppmであった。環境基準値以下(0.038ppm)のヒ素を含む井戸水を1年間供給した結果、生体内ヒ素濃度は介入前に比べて顕著に減少し、尿中cGMP濃度で評価した生体内NO産生量は約2倍近くまで増加した。興味深いことに、慢性ヒ素曝露で生じた末梢血管障害も著しく改善された(介入前男性、41.5mmHg;介入後男性、26.0mmHg;介入前女性、28.6mmHg;介入後女性、22.6mmHg)。 以上より、慢性的なヒ素摂取で見られる中毒症状のひとつである生体内NO産生低下とそれに起因する末梢血管障害は、井戸水改水により改善されることを初めて明らかにした。
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Research Products
(3 results)