2005 Fiscal Year Annual Research Report
タイにおける寄生虫による胆管癌の発症の分子疫学的研究
Project/Area Number |
15406027
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
川西 正祐 三重大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10025637)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 真理子 三重大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (10171141)
及川 伸二 三重大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (10277006)
平工 雄介 三重大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30324510)
|
Keywords | タイ肝吸虫 / 胆管癌 / 8-ニトログアニン / 感染 / 炎症 / 活性窒素種 / 誘導性NO合成酵素 / 発がん |
Research Abstract |
タイ肝吸虫は主にタイ東北部を中心に分布し、胆管癌をもたらす。慢性感染および炎症は極めて重要な発がん因子である。炎症条件下では炎症細胞などから活性窒素種が生成され、8-ニトログアニンなどの変異誘発性DNA損傷塩基を生成して発がんをもたらすと考えられる。我々はニトロ化ストレスによるDNA損傷の乗り越え修復が突然変異に関わる可能性を示した(Cancer Res.2006)。タイ肝吸虫感染ハムスターの肝内胆管上皮では8-ニトログアニンが顕著に生成され、抗寄生虫薬投与によりその生成が抑制されることを明らかにした(Int.J.Cancer in press)。さらに我々はタイの肝内胆管癌患者における分子疫学的研究を行い、8-ニトログアニンが癌組織では非癌組織より多く生成され、癌の浸潤と相関するという注目すべき知見を得た(World J.Gastroenterol.2005)。8-ニトログアニン生成は発がん過程において、イニシエーション、プロモーションのみならず、プログレッションにも関与すると考えられる。また、タイ肝吸虫感染者(40名)における尿中の酸化的DNA損傷塩基である8-oxodG量は健常人(20名)に比して有意に高く、胆管癌患者(32名)ではさらに増加するという興味深い結果を得た。タイ肝吸虫感染者では、抗寄生虫薬の投与により尿中8-oxodG量が減少する傾向を認めた。またマクロファージ培養細胞を用いて、タイ肝吸虫抗原がTLR2を介して炎症反応を起こすことを解明した(Int.J.Parasitol.2005)。また我々は炎症関連発がんにおける知見として、口腔前癌状態の患者の口腔粘膜で8-ニトログアニン生成を認めている(Cancer Sci.2005,Nitric Oxide,2006)。我々は本課題において、炎症関連発がんでは病因に関わらず発がん好発部位に8-ニトログアニンが生成されるという共通の機構を提唱し、発がんリスクおよび癌患者の予後を評価する新規バイオマーカーとなりうることを示した。
|
Research Products
(27 results)