2003 Fiscal Year Annual Research Report
バングラディシュのヒ素中毒とわが国の有機ヒ素摂取における発癌リスクアセスメント
Project/Area Number |
15406029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
圓藤 吟史 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20160393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 香 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (10336787)
鰐渕 英機 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (90220970)
黒田 孝一 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (30158886)
北村 真理 大阪青山短期大学, 生活科学科, 講師 (40369666)
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Keywords | ヒ素 / バングラディシュ / 環境汚染 / 生物学的モニタリング / 誘導結合プラズマ質量分析装置 / 粒子線励起X線 / ジメチルアルシン酸 / 発がんリスク評価 |
Research Abstract |
ヒ素は自然環境中に広く存在する元素であり、毒性の高い物質として知られている。無機ヒ素による地下水汚染により皮膚や肺、膀胱における発癌が疫学調査により報告されている。特に最近、インド西ベンガル、バングラデイシュガンジスデルタ地域でのヒ素汚染が深刻であり、両国で1億人以上のヒトがヒ素に汚染された飲料水を飲用している。ヒ素の曝露を監視するには曝露者の尿中ヒ素濃度を測定するのが有効であるが、ヒ素の毒性の強さは形態によって大きく異なるため、総ヒ素量ではなく尿中ヒ素代謝物の化学形態別定量が必要となってくる。 本年度は、バングラデイシュヒ素汚染地域であるPabna地方で、7つの村の27家族、90名の人より毛髪と尿試料を採取し、健康状態の調査をした。尿は冷凍保存して持ち帰り、その尿中ヒ素化合物を液体クロマトグラフ誘導結合プラズマ質量分析装置(LC-ICP-MS)により分析した。毛髪は粒子線励起X線(PIXE)により元素分析を行った。また、有ヒ素化合物を含む海産物を食事として多く摂取している日本人の尿中ヒ素化合物を測定し、バングラディシュヒ素汚染地域住民のものと比較した。その結果、日本人の尿中から、亜ヒ酸(AsIII)、ヒ酸(AsV)、モノメチルアルソン酸、ジメチルアルシン酸(DMA)、トリメチルアルシンオキサイド、テトラメチルアルソニウム、アルセノベタイン(AsBe)および未知ヒ素化合物11種の計18種のヒ素化合物が検出された。一方、バングラディシュのヒトの尿からは、AsIII、AsV、MMA、DMAの計4種のヒ素化合物のみが検出された。日本人の尿は、海産物由来と考えられるAsBeが最も多く、.バングラディシュのヒトでは、メチル化代謝物であるDMAが最も多く検出された。これらの結果は、無機ヒ素曝露者の発がんリスク評価と、生物学的モニタリングとしての評価に有用である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Zhou, X., Yoshida, K., Kuroda, K., Endo, Y., Endo, G.: "Effects of cysteine on the cytotoxicity of arsenic compounds"Arch.Environ.Contam.Toxcol.. 45. 324-330 (2003)
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[Publications] Yoshida, K., Kuroda, K., Zhou, X., Inoue, Y., Date, Y., Wanibuchi, H., Fukushima, S., Endo, G.: "Urinary sulfur-containing metabolite produced by intestinal bacteria following oral administration of dimethylarsinic acid to rats"Chem.Res.Texicol.. 16・9. 1124-1129 (2003)
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[Publications] 圓藤 吟史: "重金属汚染-ヒ素"第26回日本医学会総会会誌. (In press). (2003)
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[Publications] "ジフェニルアルシン化合物の毒性(日本ヒ素研究会)"Arsenic Letter. No.8. 8-13 (2003)
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[Publications] 圓藤 吟史: "重金属汚染-ヒ素"第26回日本医学会総会会誌. (In press). (2003)
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[Publications] "ジフェニルアルシン化合物の毒性"Arsenic Letter(日本ヒ素研究会). No.8. 8-13 (2003)