2004 Fiscal Year Annual Research Report
バングラディシュのヒ素中毒とわが国の有機ヒ素摂取における発癌リスクアセスメント
Project/Area Number |
15406029
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
圓藤 吟史 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20160393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鰐渕 英機 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (90220970)
吉田 香 甲子園大学, 栄養学部, 助教授 (10336787)
北村 真理 大阪青山短期大学, 生活科学科, 講師 (40369666)
林 朝茂 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (10381980)
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Keywords | ヒ素 / 井戸水 / 有機ヒ素 / 環境汚染 / バングラディシュ / 食品 / リスクアセスメント / 発癌 |
Research Abstract |
バングラディシュ・パブナ地方の7つの村で27井戸、27家族、91人を対象として調査を行った。100-700μg/Lの高濃度ヒ素を含む井戸が5井戸、20-100μg/Lが4井戸であった。皮膚症状は、メラニン沈着または色素脱失が26名、軽度・中等度・高度角質の肥厚が39名であった。曝露期間が10年以上の者に症状が強く、皮膚症状は遅発性と考えられた。尿のHPLC-ICP-MS分析において、現在高濃度のヒ素を含む井戸水を飲用している者23名では尿中総ヒ素量は316.3±324.8μg/Lと高く、その成分はヒ酸(As V)、亜ヒ酸(As III)、モノメチルアルソン酸(MMA)、ジメチルアルシン酸(DMA)であった。高濃度ヒ素を含む井戸水の飲用を5年以上中止している者44名では、63.7±54.2μg/Lであった。食品由来と考えられるトリメチルアルシンオキサイド(TMAO)、テトラメチルアルソニウム(TeMA)、アルセノベタイン(AsBe)は検出されなかった。 アメリカ労働衛生専門家会議(ACGIH)は、生物学的影響指標(BEI)として尿中の無機ヒ素とメチル化代謝物(MMA、DMA)の総和として35μgAs/lを提唱している。現在、高濃度ヒ素を含む井戸水を飲用していない者でも、35μgAs/lを超える者が多く、癌の発症が懸念される。 一方、日本人ヒ素化合物取り扱い作業者および日本人非曝露者の尿より、As III、As V、MMA、DMA、TMAO、TeMA、AsBeおよび総ヒ素量の0〜30%を占める未知ヒ素化合物11種の計18種のヒ素化合物が検出された。 日本人の尿から検出された未知ヒ素代謝物は、バングラディシュの人の尿からは検出されなかった。このことから、11種の未知ヒ素代謝物も海産物由来のヒ素代謝物であることが示唆された。
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Research Products
(5 results)