Research Abstract |
人の空間認知能力や形状構築能力の評価は,脳の負傷や傷害を検査し診断するための重要な医療ツールであり,さらに脳の認知機能の研究においても不可欠なものである.これらの評価は患者や被験者に,心的回転(mental rotation)のような純粋な認知タスクを与えるだけではなく,ブロックを配置したり,提示された通りにパズルのピースを並べるといった構築タスクを与えることによって実施される.これらの構築タスクは空間認知能力のみならず,知覚・計画・実行といった実際に日常生活で必要とする能力を評価することが可能である。これまでにいくつかの研究において,2次元ではなく3次元形状を用いた構築タスクによる評価が重要であり,有益であることが示されている.しかしながら,3次元形状を用いたタスクにおけるタスク管理者の役割は,被験者へのタスクの提示や,構築途中の3次元形状の記録など複雑なものであり,被験者ごとのタスク完了時間などの記録の整合性と信頼性を確保することが困難であった. そこで我々は3次元形状構築タスクで使用される各ブロックにマイクロプロセッサを実装し,ホストPCによって被験者がどのような形状を構築しているかをリアルタイムに記録し,タスク終了後に得られたデータを自動的に解析する3次元空間認知能力評価のためのユーザインタフェースを提案・試作する.さらに,これを用いて被験者実験を行い,試作されなユーザインタフェースが被験者の3次元空間認知能力を評価するに十分に精度が高いかを検討する.その結果を利用して,3次元空間認知能力評価を高度に支援する新しいユーザインタフェースを実現するための要素技術を確立することを目的とする. 本年度は,前年度作成したユーザインタフェースのプロトタイプをベースとし,被験者実験で得られた知見を元に,ハードウェアならびにソフトウェアの改良を行った.ハードウェアは,接続・分離の信号線を新たにブロックの接続面に増設することで検出精度を向上させ,また,使用しているネットワーク方式を変更することで速度向上を行った.ソフトウェアではプロトタイプでは被験者の認知能力評価データは実験終了後,オフラインで算出する必要があったが,ターゲット形状と構築形状とを比較する類似度算出アルゴリズムを改良し,リアルタイムな空間認知能力の評価を可能とした.これらにより,実際の医療診断現場におけるフレキシビリティおよびユーザビリティが向上すると考えられる.
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