Research Abstract |
ユーザと認知行動空間を共有・分担してユーザもしくは独自の注視点から認知体験を記録し,それらをもとにユーザの日常行動,意思決定,及びコミュニケーションを支援するシステムの実現をめざして,その基礎技術となる注意制御の方法,認知情報符号化に基づくユーザモデリングの方法,及びそれらに基づく実情報空間ナビゲーションの方法,の研究を行ってきた.本年度は,第1に,昨年までに開発した注意制御に基づくシーン符号化方式に関して,静止及び移動物体が混みあって存在する日常生活環境,及びユーザとのインタラクションを伴う対話環境に対応するための拡張を行った.本拡張では,まず,視覚特徴抽出に関して,多解像度ピラミッド上で明度・彩度・色相,コントラスト,方位線分,及び動き(モーションエネルギー)の抽出を行なえるようにした.次に,これら特徴のうちコントラストと動きから計算される顕著性に基づくボトムアップな注意とトップダウンに与えられる空間注意とを組み合わせた確率的注意制御方式,及びこの注意制御のもとでこれら特徴量を用いて対象のセグメンテーションを行う確率競合ニューラルネットワークを構築した.そして,ユーザの意志に基づく空間注意指示のもとでの注意対象符号化,及びそれら注意対象からなるシーンの符号化方式を構築した.第2に,ユーザに対する個人適応的な音声情報ナビゲーションを実現するために,ユーザとの音声インタラクションからユーザの要求行動を状況依存的にモデリングする方法の構築を行った.本方法では,ユーザの要求,提供情報,ユーザの応答,及びインタラクションがなされた時空間状況の間の因果関係がベイジアンネットワークにより表現され,ユーザの要求,もしくは状況に合わせた情報提供がなされる.ニュース情報提供を例として,ユーザのニュース聴取体験から構築したベイジアンネットワーク型ユーザモデルを用いて,状況依存的な音声情報提供の実験評価を行った.
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