2003 Fiscal Year Annual Research Report
アルツハイマー病の病態における細胞内小胞体貯留Aβ42の果たす役割
Project/Area Number |
15500225
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辛 龍雲 東北大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (40271910)
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Keywords | Aβ / Tau / リン酸化 / 脱リン酸化 / COS7細胞 / 小胞体 / 細胞質 |
Research Abstract |
Aβ42について3種類のコンストラクトすなわち細胞質に発現するためにすべてのsignalを除き、N末端にMetを付加したMetAβ42、小胞体膜に貫通した状態で発現するためにAPP由来signal peptide (SP)を付加したSP-Aβ42、そして小胞体腔内に貯留させるためのsignal KDELを付加したMetAβ42-KDELをCOS7細胞に発現させ、小胞体障害の有無を解析した。Unfolded protein response活性化の指標となるGRP78,GRP94,PDIの発現亢進とcaspase12経路の活性化の有無を調べたところ、これらの変化は認めなかった。すなわち、今回用いた実験系において、Aβ42の発現が小胞体の障害を来たすことはないという結論を得た。Aβ42は小胞体で産生され、ERADによりて細胞質へ逆輸送されることが示されている。そこでAβ42とtauの相互作用を調べるために、SP-Aβ42あるいはMetAβ42とtauをCOS7細胞に共発現し、Aβ42がtauのリン酸化に与える影響を調べた。Tauの単独発現では、Thr181とThr231の部位でリン酸化を受け、GSK3βとの共発現によってリン酸化レベルを上昇させると、さらにSer202,Ser396,Ser404部位のリン酸化を受けた。ところが、tauあるいはtau+GSK3βの発現にさらにAβ42が加わると、これらの部位におけるtauの脱リン酸化が観察された。脱リン酸化酵素阻害剤による脱リン酸化反応の抑制効果を調べることによって、Aβ42による脱リン酸化反応にはPP1が関与していることが判明した。これは、正常の細胞質においては、Aβはtauのリン酸化を亢進するのではなく、逆に脱リン酸化を惹起するものであることが明らかとなった。平成16年度には、このtauの脱リン酸化の分子的機序を解明する予定である。
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