2003 Fiscal Year Annual Research Report
免疫不全マウスを用いたエキノコックス症病態モデルの開発
Project/Area Number |
15500295
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
中谷 和宏 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (70109388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
迫 康仁 旭川医科大学, 医学部, 助手 (40312459)
中尾 稔 旭川医科大学, 医学部, 助手 (70155670)
山崎 浩 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (00138207)
伊藤 亮 旭川医科大学, 医学部, 教授 (70054020)
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Keywords | Echinococcus multilocularis / 多包虫 / 病態モデルマウス / 免疫不全 / NOD-scid / Alveolar echinococcosis / 転移 / Em 18 |
Research Abstract |
本年度は免疫不全マウスを用いて多包虫の増殖・発育過程を調べた。使用したマウスは、塩野義製薬で開発された非肥満糖尿モデルNOD/Shiにscid遺伝子が導入されたNOD/Shi-scidである。このマウスは機能的なT細胞およびB細胞が欠如しており、人のsevere combined immunodeficiency diseaseに類似した症状を呈する。このマウス(1群5匹)の腹腔に多包虫症患者より分離されて継代されているEm-K株を感染接種した。対照群にはNOD/Shiマウス(1群3匹)が用いられた。感染1,2,3,6,9,12週で回収された多包虫の重量を秤量し、組織標本を作成して形態学的な観察をするとともに、採取した血清についてEm-18抗原を用いたELISA法による抗体測定を実施した。多包虫重量はNOD/Shi-scidでそれぞれ0.10,0.12,0.17,0.98,3.64,11.58gとなり、感染9週より急激な増量をみた。一方、NOD/Shiでは0.06,0.22,0.23,0.47,0.97,1.10gで、緩やかな上昇しか見られなかった。形態的には、NOD/Shi-scidの6週以降で多房化の進行と同時に、活発な原頭節形成が観察された。NOD/shiでは炎症性細胞の浸潤が強く現れ、多包虫の発育や増殖が強く抑制されていた。NOD/Shi-scidではB細胞が欠損しているのでIgGが産生されず、予想通りEm-18に対する抗体は認められなかった。しかし、NOD/Shiでは、感染6週より急激な抗体の上昇が確認された。これらの結果より、NOD/Shi-scidは多包虫疾患モデルとして極めて有用なマウスであることが判明した。この成果は平成16年4月4日の寄生虫学会にて報告される。本テーマは次年度で、nudeマウスやC.B-17/Icr-scidとの比較も計画されている。 多包虫は特異な発育様式を呈する。原頭節は終宿主において成虫になる能力と、中間宿主において嚢胞になる能力の二方向性を有していると考えられてきた。この性質の真偽を確認するため、スナネズミの腹腔で増殖させた多包虫を摘出してホモゲナイズし、ペルコール比重法により原頭節と嚢胞の分画を別々に得た。それぞれをマイクロチャンバーに封入し、DBA/2Jマウスの腹腔に移植して経時的に取り出し観察した所、原頭節は膨化後、変性萎縮してしまい嚢胞へ分化することは無かった。他方、嚢胞をマイクロチャンバーに封入したものでは、多数の嚢胞を産生していた。嚢胞は嚢胞より生れ、原頭節は成虫にのみ発育するという単純な結論ではあるが、これまでの通説が覆る可能性を有している。現在、追加試験を実施中である。多房化のメカニズム、転移現象の有無、原頭節のアポトーシス等については次年度に計画している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Xiao N, Li TY, Qiu JM, Nakao M, Chen XW, Nakaya K, Yamasaki H, Schantz PM, Craig PS, Ito A.: "The Tibetan hare Lepus oiostolus : a novel intermediate host for Echinococcus multilocularis"Parasitol Res. 2004 Jan 14 [Epub ahead of print]. (2004)
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[Publications] Xiao N, Qiu J, Nakao M, Nakaya K, Yamasaki H, Sako Y, Mamuti W, Schantz PM, Craig PS, Ito A.: "Short report : Identification of Echinococcus species from a yak in the Qinghai-Tibet plateau region of China"Am J Trop Med Hyg.. 69・4. 445-446 (2003)
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[Publications] Asanuma T, Matsumoto Y, Takiguchi M, Inanami O, Nakao M, Nakaya K, Ito A, Hashimoto A, Kuwabara M.: "Magnetic resonance imaging and immunoblot analyses in rats with experimentally induced cerebral alveolar echinococcosis"Comparative Medicine. 53・6. 522-529 (2003)
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[Publications] Xiao N, Mamuti W, Yamasaki H, Sako Y, Nakao M, Nakaya K, Gottstein B, Schatz PM, Lightowlers MW, Craig PS, Ito A.: "Evaluation of use of recombinant Em18 and affinity-purified Em18 for serological differentiation of alveolar echinococcosis from cystic echinococcosis and other parasitic infections"Journal of Clinical Microbiology. 41・7. 3351-3353 (2003)
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[Publications] Ito A, Sako Y, Yamasaki H, Mamuti W, Nakaya K, Nakao M, Ishikawa Y.: "Development of Em18-immunoblot and Em18-ELISA for specific diagnosis of alveolar echinococcosis"Acta Trop.. 85・2. 173-182 (2003)
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[Publications] 伊藤亮, 石川裕司, 北田正博, 中谷和宏, 笹嶋唯博(2003): "肺エキノコックス症"呼吸. 22・1. 56-60 (2003)