Research Abstract |
本研究に対して文書で同意を得た学生ボランティア35名について,ナゾメータを用いて鼻音性評価の指針となるNasalance平均値と標準偏差を測定し,その結果を元にThe MacKay-Kummer SNAP Test日本語試作版の鼻音性異常度を判別する基準値の更新を行った。 今回の被験者の内訳は,青年期の男性17名(平均年齢20.3歳,18-33歳)及び女性(平均年齢20.7歳,18-22歳)で,いずれも聴力,発声発語器官に異常のない中国地方方言話者である。測定は,昨年度までに用いた,21種の単音節,さらに,堤ら(1999)の作成した短文15題に加えて,新たに,平田ら(2002)の作成した母音と半母音で構成した短文(上を覆う,用意は多い)及び閉鎖性音節で構成された短文(キツツキつつく,コツコツつくす)についてNasalance平均値と標準偏差を測定し,近畿方言との差異についても検索した。また,長文として「北風と太陽」の冒頭部、(194文字,224モーラ)についても同様にNasalance平均値の測定を行った。 その結果,Nasalance平均値は従来より幾分高い値となり,また,女性のNasalance平均値は男性より高くなる傾向がみられた。特に後続母音が/a/の単音節では,鼻音音節を除き,破裂音,摩擦音のいずれにおいても女性のNasalance平均値が男性より有意に高かった。また,平田らの作成した短文では,Nasalance平均値は,中国方言話者が近畿方言話者より有意に高かった。 以上の結果から,The MacKay-Kummer SNAP Test日本語版を男女別に分けて作成した。本試作版は中国方言話者についてのものであり,今後,各地の方言差を考慮したNasalance平均値の基準値の検索の必要であることが示唆された。この点は,臨床応用も含めて,今後の検討課題としたい。
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