2005 Fiscal Year Annual Research Report
「部活」の「地域化」と地域課題:長野五輪のLegacyに関連して
Project/Area Number |
15500410
|
Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
甲斐 健人 奈良女子大学, 文学部, 助教授 (50272183)
|
Keywords | 運動部活動 / 総合型地域スポーツクラブ / 長野五輪 / スキー / Sport Legacy |
Research Abstract |
本研究は平成15年度から17年度の3ヵ年のプロジェクトである。前年度までに、主に欧米のスポーツLegacy論の検討と長野県山ノ内町を中心としたフィールドワークを実施した。今年度は福島県檜枝岐村でのフィールドワークを実施しつつ、研究のまとめの作業を行った。 スポーツレガシーの焦点の一つは、ビックイベント開催後にその「遺産」が地域住民の誰に、どのように受け入れられるのか、という点におかれていた。これは競技施設などハード面にとどまるものではない。長野県山ノ内町、野沢温泉村などの地域においては、長野五輪のレガシーとして立ち上げられた次世代競技選手の育成システムが実施されていた。中野実業高校、飯山南高校等のスキー部が地域住民と協力しながら活動している。しかし、それらは競技選手の育成に特化されていた。 一方、長野五輪の影響をほとんど受けていない福島県檜枝岐村では総合型地域スポーツクラブとして檜枝岐スポーツクラブが設立され、小学生中学生を含めた地域住民が活動を行っていた。トップアスリート育成に傾きがちな長野県山ノ内町などの状況と比べると、対照的ともいえる。ただし、立ち上げには福島県の働きかけが強い影響を与えており、その活動自体はあまり活発とはいえない。福島県の支援がなくなると同時に、活動も縮小しつつあるとも言える状況であった。観光を主たる生業とする檜枝岐村では、近年の観光客、スキー客の激減が非常に大きな問題であり、観光客の増加を見込んだ第三次産業への特化、施設拡大という方向の修正が課題である。スキー場の平日営業を中止せざるを得ない中で、スポーツクラブの位置づけも形骸化しつつある。しかしながら、このような状況を村側の責任と判断することは難しい。総合型地域スポーツクラブの理念と同村の実態との乖離が大きいがゆえの問題ではないかと思われる。
|