2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15500412
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋詰 謙 大阪大学, 健康体育部, 助教授 (50156270)
|
Keywords | 運動技能 / 運動学習 / 認知方略 / 注視点 |
Research Abstract |
スポーツ動作は練習(四肢の動かし方や力の調節、リズム形成など)によって獲得されるが、目標とする動作をどのように捉え、自己の運動の構築に役立てる認知過程も重要である。本研究では、スポーツ場面における運動技能の獲得と視覚的認知方法との相互関係を知ることを目的とした。 テニス経験がほとんどない大学生を2群(学習群、統制群)に分け、同一の刺激映像(6名のテニス経験者のサーブ動作:トス動作開始からインパクト直後まで)を3回見せた。初回は実験開始時で全く教示もなしで見せ、2回目は初回直後にサーブの打ち方のポイントを教示した後に見せ、3回目は約3ヶ月後に見せた。初回および3回目で、被験者に刺激映像のサーブの特徴を述べさせた。学習群は3回目までに約11回のサーブ練習(体育の授業内で毎回15分程度)を課した。学習群にはサーブの打ち方について数回教示したが、その際、刺激映像を用いたり、注視すべき身体箇所を指摘することはなかった。また学習群のサーブ動作およびボール軌道を実技授業の初回と最終回でビデオ撮影し、チェックリストを用いて習熟度を評価した。刺激映像を見せる際に、被験者にはアイ・マーク・レコーダを装着して注視点の移動を記録し、その停留箇所と時間を分析した。統制群は約3ヶ月間、全くテニスに関係することはなかった。 チェックリストにより評価した学習群のサーブスキルは、有意に向上していた。学習群では、サーブの特徴についてのコメント数は初回の刺激映像後に比べ3回目では2倍以上(平均1.6個→3.5個)になっていたが、統制群ではそれほど増加していなかった(2.0個→2.4個)。統制群に比べ学習群では、トスの方向や高さ、打点の高さ、ラケットを持つ側の肘、膝の動き、体重移動に関するコメントが非常に増加していた。アイ・マーク・レコーダから検出される注視点の停留時間は、初回に比べ2回目および3回目では短縮する傾向にあった。停留箇所は、初回では全体の約1/3の期間で顔面・頭部と頭部であった。2回目では、両側の肩や右肘〜前腕、ラケットに停留する時間が増加ししていた。学習群の3回目ではこれらに加え膝やトス後のボールに停留する比率が高まる傾向にあった。 以上のことから、スポーツ動作に関する教示を与えることにより、細かく、且つ、身体各部へ視点を変えて動作を見るようになるが、実技練習によって技能が高まると、トスや膝の動きなどのサーブのポイントとなる箇所への注意が一層明確になり、それがコメントにも反映することが示唆された。
|