Research Abstract |
本研究は,各被験者の相対運動負荷となる速度を複数段階設定し,運動負荷強度ごとに足関節まわりの動作の特徴を明らかにすることで,シューズの評価をする際,適切な負荷強度について検討することを目的とした. 事前に被験者の換気性作業閾値(VT)をランニング中の呼気ガス分析により測定し,まず,VTレベル対応速度,その20%超過速度,40%超過速度の3段階の負荷条件で比較を行った.被験者は7名で,傾斜5%のトレッドミルにおいて,条件ごとに15分間ランニングを行った.心拍数の測定と足関節まわりの画像解析を行い,時間的要素2項目,パフォーマンスに関する指標2項目,3次元足関節角度指標4項目,足関節角速度指標3項目を算出した.ランニング後にはVASを用いて速度やランニング中の安定感に関する主観的な評価を行った.この結果,VT対応速度については,ランニングを習慣的に行っていない被験者の場合,ランニング動作の評価としてはかなり遅い場合があることが示唆された.また,20%超過速度において特に個人差が大きかったことより,負荷強度の増加に対して足関節動作は一定の変化をするのではなく,動作が大きく変化する負荷強度があり,その強度は被験者によって多少異なるのではないかと考えた. 次に,VTの20%超過速度以上の負荷強度をより細かく設定し,負荷条件間の比較を行った.被験者は6名で,負荷条件はVTレベル対応20%超過速度から5%間隔で40%超過速度までの計5条件で,それぞれ3分間程度のランニングを行った.前脛骨筋,長腓骨筋,内側腓腹筋,外側腓腹筋の表面筋電位の測定を追加し,着地前と立脚期における平均積分筋電位を算出した.この結果,VTの35%超過速度では,着地時の内転角度の増加や,最大背屈角度と外反角度の関係など低負荷条件とは異なる足関節動作の特徴が明らかになり,着地前に前脛骨筋の活動の増加も確認された.また,VTの40%超過速度では,パフォーマンスの変化が確認されたが,足関節角度に関しては個人差が大きかった. 以上より,シューズ性能評価にあたっては,足関節動作における被験者間のばらつきが比較的小さいVTの35%超過速度を試技として用いることで,シューズの特徴を最も識別しやすいと考えられる.
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