2003 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内シグナル伝達系からみた萎縮筋の回復過程に及ぼす温熱刺激の影響
Project/Area Number |
15500446
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
杉浦 崇夫 山口大学, 教育学部, 助教授 (80136150)
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Keywords | 筋萎縮 / 回復過程 / 温熱刺激 / 細胞内シグナル伝達 / 熱ショックタンパク質 / カルシニューリン |
Research Abstract |
本研究は、安全かつ効率的なストレス負荷で筋力増大をもたらす新しいトレーニング法を開発することを目的に、熱ストレス負荷による骨格筋肥大促進機構をもたらす至適刺激温度について、尾部懸垂により萎縮したラットヒラメ筋を用い筋肥大時の細胞内シグナル伝達経路として知られているPKB/S6を介する経路ならびにCa2+/カルモジュリン依存性脱リン酸化酵素であるカルシニューリンとの関連から検討することである、。本年度は、尾部懸垂による萎縮ヒラメ筋を被検筋に用い、41℃での熱ストレスを負荷した際の萎縮からの回復過程について検討した。 実験動物には8週齢のウィスター系雄ラットを用い、体重が等しくなるように対照群(Cont群)、尾部懸垂群(Sus群)、尾部懸垂+熱ストレス負荷群(Heat群)に分けた。尾部懸垂は10日間行い、Heat群には懸垂終了後、直ちに41℃で30分間、熱ストレスを負荷した。回復期間の観察は、尾部懸垂あるいは熱ストレス負荷直後、3日後、10日後に行った。 筋重量並びに相対筋重量は、回復直後、3日後ではHeat群、Sus群はCont群に比べ低値を示したが、10日後ではほぼ回復し特にHeat群はSus群よりも高値を示した。熱ショックタンパク質(HSP)40発現量は、3日後でHeat群はCont群に比べ高値を示した。また、Heat群とSus群のHSP72発現量は、10日後で、Cont群に比べ高値を示した。細胞内シグナル伝達物質(pPKB、p70^<s6k>、pS6)は、回復3日後、10日後ともにCont群に比べHeat群とSus群で高い値を示し特に回復3日後ならびにHeat群で顕著であった。また、カルシニューリンにおいても同様の変化を示した。 これらの結果は、萎縮筋の回復初期では筋サイズの回復にPKB/S6を介する経路やカルシニューリンが関与し、それは熱ストレスによって増強されることを示唆する。
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