2003 Fiscal Year Annual Research Report
イソフラボン代謝産物の産生能に関わる因子と疾病予防効果に関する研究
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15500555
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
上原 万里子 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教授 (20211071)
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Keywords | イソフラボン / equol(エクオール) / daidzein(ダイゼイン) / genistein(ゲニステイン) / フラクトオリゴ糖 / 腸内細菌叢 |
Research Abstract |
【目的】エストロゲンと構造が類似していることから植物エストロゲンとも呼ばれる大豆イソフラボンは、エストロゲン関連のがんや、その他の生活習慣病予防効果をもつことで知られている。しかし、その生体内利用や他の食事因子の影響に関する研究は少なく、特にイソフラボンの代謝産物については未知の部分が多い。daidzeinの代謝産物であるequolはdaidzeinよりも強いエストロゲン様作用を示し、疫学研究において、乳がんのリスクを低下させる物質として知られている。しかしながらヒトではequol産生能に強弱があり、この違いは各個人の腸内細菌叢によるところが大きく、equolの産生能を高くもつことは疾病罹患のリスク軽減につながる。そこで本研究では、equolと、腸内細菌叢を変化させ大腸からのミネラル吸収を促進させることで知られるフラクトオリゴ糖(FOS)との関係に着目し、どのような条件下でFOSがdaidzeinからのequol産生能を増加させるのかをラットを用いて検討した。 【方法】幼若SD系雄ラットを、大豆胚軸由来でdaidzein優位のイソフラボン配糖体の単独摂取とFOSとの併用摂取の2群に分け、さらに各々を屠殺前の12時間絶食または非絶食に分け、計4群とし、2週間の飼育観察を行った。イソフラボンの腸肝循環は摂取後約6時間から開始されるため、絶食時の血中イソフラボン(daidzein, genistein)濃度およびdaidzeinからのequol産生に及ぼすFOSの影響を観察した。飼育終了前24時間の糞尿を採取し、解剖時に盲腸内容物重量およびpHの測定も行った。また、盲腸内容物の一部を腸内細菌叢解析のため、採取した。 【結果】FOS併用摂取ラットでは盲腸内容物重量は増加し、内容物のpHは明らかに低下していた。血中daidzeinおよびgenistein濃度は12時間の絶食により減少したが、絶食の有無に関わらず、FOS摂取により増加した。daidzeinでは、12時間絶食をかけないラットでのFOS摂取による血中濃度増加率が高かったが、genisteinについては、絶食をしたラットでのFOS摂取による濃度増加率が高かった。equol濃度ではFOS併用摂取による変化はみられず、先の実験の結果との再現性が得られなかったため、尿中濃度も把握し、その後の再検討が必要と思われる。現在、盲腸内容物および糞中の腸内細菌叢を解析中である。
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