2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15500585
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
遠西 昭壽 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20135396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 博幸 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (30024003)
川上 昭吾 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10033896)
吉田 淳 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90115668)
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Keywords | 新科学観 / 観察の理論負荷性 / 科学知識 / 共約不可能 / 構成主義 / プリコンセプション / 代替理論 / 科学の用語 |
Research Abstract |
新科学観は、 (1)観察の理論負荷性 (2)パラダイムの存在と科学者の合意による科学知識の正当化 (3)共約不可能性 によって特徴づけられる。 「観察の理論負荷性」は、観察事実が観察者のアプリオリな理論からの解釈的事実であることでる。このことは、子どもたちの観察事実が、構成主義者が明らかにしてきている、子どもたちが学校に持ち込んでくるプリコンセプションや代替理論などといった子どもたち固有の理論から解釈されたものであることを意味している。これは科学知識の習得者である教師の観察事実とは異なるものであり、教師と子どもは同じものを同じものとしては見ていない。それにもかかわらず、授業はまず観察によって事実を収集し、それらをまとめることで概念化、理論化するという帰納的な方法で行われている。これが、子どもたちに理科を難しく感じさせる原因の一つである。 「科学知識の正当性」は科学者共同体における合意である。科学知識が合意によって正当化されるには、単に論理性や合理性だけではなく、より広い範囲に適用できたり、周辺の理論との調和性に配慮したり、アドホック性を排除するといったことが含意されている。ところが多くの教師は、科学知識を論理性と合理性のみに求め、単純な実験や観察の結果から子どもたちに科学知識を発見させ創造させようと試みる。しかし、子どもたちの貧弱な経験から科学知識を創造することなどできない。何より、何が科学知識であるかを決めるのは子どもでも教師でもなく科学者である。 「共約不可能性」は科学における用語の意味が、パラダイムが異なると違っていて、同じことばで語り合っても互いに理解し合わない、という問題である。ここでも、科学の既習得者である教師は「科学の用語」を用い、学習過程にいる子どもたちは「日常のことば」を用いるため、互いが異なる了解をしているということが生じている。 理科学習の困難性(すなわち理科嫌い)は、学習内容の問題であると考える以前に、この様な観点からの教授方法論上の問題としてとらえるべきである。
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Research Products
(6 results)