2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15500670
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
堀内 晶子 国際基督教大学, 教養学部, 助教授 (60052289)
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Keywords | ステロール / コレステロール / β-シトステロール / カンペステロール / スチグマステロール / 土器 / 縄文 / 脂質 |
Research Abstract |
土器に吸着された脂質を分析するに際し、我々はまず吸着した脂質構成成分が環境や時間と共にどのように変化するかの基礎データを収集・分析・考察してきた。これまでの結果を踏まえて、今年度は国基督教大学考古学研究室の協力を得て入手した縄文土器(加曽利E式)の浅鉢と見られる土器片から脂質を抽出し、特に主に動物に含まれるコレステロール及び、植物性のスチグマステロール、カンペステロール、β-シトステロールの残存を調べた。 我々はまず外環境による分解や流出、後からの混入などが予測される表面の脂質と、外部から守られ、土器中心部に深く浸透、吸着している脂質(コア)に差があるのではないかと考えた。そこで土器片をまずそのままクロロホルム:メタノール(2:1)でソニケーション抽出し、表面近くの脂質を抽出した後、土器を紛状にして内部に残っている脂質を再度抽出し、土器表面近く(表面)と、土器の中心部(コア)を別々に分析した。脂質は加水分解により生体内のステロール類の多くを占めているステロールエステルをステロールに変換した後TMS化し、GCもしくはGC-MSで定量した。その結果一見なにも付着していないように見える土器片すべてにステロール類が含まれていることが明らかになり、動物性、植物性食物がこれらの浅鉢に入っていたことが示された。特にコア部分には表面の10倍以上のステロール類が含まれている試料もあり、これまで一般的に行われてきた表面のみの分析では抽出しきれない脂質がコアに多量に残留している事が明らかになった。また、表面とコアでは植物性ステロールとコレステロール比が変化していること、さらに植物性ステロール類同士の比も変化していることから、各ステロールによる分解や流出の度合いの差、繰り返し使用するために生じる吸着脂質の種類変動などが分析結果を解析する際、複雑に関与すると予測される。
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