2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15510004
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
石松 惇 長崎大学, 水産学部, 教授 (00184565)
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Keywords | 二酸化炭素 / 海洋生物 / イソスジエビ / 慢性影響 / 成長 / 脱皮 |
Research Abstract |
大気中の二酸化炭素(CO_2)濃度は2300年頃に約1900ppmに達すると予測されている。大気中に蓄積したCO_2は、分圧勾配に従って海洋表面から海水中へ拡散し、浅海生物に影響を及ぼすことが予想される。しかし、この点に関しての情報は非常に乏しい。今年度は、CO_2がイソスジエビ(Palaemon pacificus)の生残・成長に与える影響を長期曝露実験によって検討した。 イソスジエビを、空気(対照区:CO_2濃度380ppm)及び1900ppmCO_2を含む空気(実験区)で曝気した海水に曝露した(各N=20)。実験水温は約26℃、曝露期間は15週間とした。毎日、生死と脱皮の有無を確認し、摂取量を求めた。また、3週毎に体長(BL)と頭胸甲長(CL)を測定した。実験終了時に、頭胸甲のカルシウム含量をフレーム分析法により測定した。 実験終了時における実験区の生残率(65%)は、対照区(95%)と比べて有意に低くなった。実験区の平均脱皮間隔(9.44±2.69(S.D.)日)は、対照区(7.67±1.28日)より有意に長くなった。摂取量は、両区で有意差はなかった。実験区のBL及びCLの増加率は、対照区と比べて有意に低い値を示した(BL:38±12%、実験区16±9%;CL:対照区30±15%、実験区-1±19%)。頭胸甲のカルシウム含量は、実験区で対照区と比べて低い値を示した。 これらの結果より、将来想定される海水中CO_2濃度の上昇が、わずか15週間でイソスジエビに深刻な影響を与えることが明らかになった。今後はCO_2慢性影響のメカニズムについて明らかにするとともに、より低濃度のCO_2による慢性実験(21世紀末に想定される大気中CO_2濃度550〜980ppm)を行う必要がある。
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