2003 Fiscal Year Annual Research Report
大気環境中に放射性核種並びに微量元素の起源と挙動に関する研究
Project/Area Number |
15510012
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Research Institution | Musashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
本多 照幸 武蔵工業大学, 工学部, 助教授 (30139414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 勝己 気象庁気象研究所, 地球化学研究部, 室長 (70343895)
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Keywords | 大気環境 / 大気降下物 / 黄砂 / 微量元素 / 人工放射性核種 / 天然放射性核種 / 中性子放射化分析 / γ線スペクトロメトリ |
Research Abstract |
平成15年度では、(1)2000年長崎、つくば及び2001年つくば月間大気降下物、並びに(2)黄砂(長崎、2001年3月採取)及び土壌(長崎、2000年3月採取)試料を取り上げ、ランタノイド元素(Ln)等、微量元素を中性子放射化分析法を用いて定量し、さらに^7Be、^<210>Pb、^<137>Cs等の天然及び人工放射性核種をγ線スペクトロメトリにて定量した。 その結果、大気環境物質の挙動について以下の知見を得た。(1)降下物中の元素濃度は多くの場合、降水現象と関係があり、Na及びBrは降水量の増減に対応して濃度も増減するが、ScやLn等は逆の対応を示した。これは雨水に対する元素の溶解度によるものと考えられる。また、Sc及びLnは、2月〜5月で黄砂規格化値が1.0に近く、かつ^<137>Csも検出されており、この時期に黄砂が大量に降下していることを反映している。(2)Scは降下物中で地殻平均組成や島弧地殻岩石より濃度が低く、黄砂に近かったことから、その多くが大陸起源と推定された。Br、Sb及びZnでは地殻規格化値が大きく、人為的起源であることが強く示唆された。(3)2000年長崎降下物試料を黄砂で規格化した値を用いて、黄砂がどの程度降下しているのか概算した。その結果、3月では6.8〜10g/m^2、4月では2.4〜3.3g/m^2、5月では3.9〜4.9g/m^2なる値を得た。(4)つくば降下物の2001年と2000年試料を比較すると、NaとBrは8月と9月で2001年の方が3〜6倍ほど高く、Thは全ての月で2001年の方が高かった。(5)降水中の^<210>Pbと^7Be放射能濃度の相関係数は、長崎、つくば共に高く、両核種の濃度は夏期(南風)に低く、冬期(北風)に高い傾向があった。このことは、両核種とも降水現象と密接に関係しており、かつ^<210>Pbについては北方の大陸が主な起源であること、^7Beについては、緯度効果により高緯度地方の方がより多く生成されていることと関係している可能性がある。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 本多照幸, 五十嵐康人, 青山道夫, 廣瀬勝己: "大気降下物中の^<210>Pbおよび^7Be濃度の変動とその要因"フィッション・トラック ニュースレター. 通巻・17(印刷中). (2004)
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[Publications] 本多照幸, 木村賢一郎, 森本隆夫, 鈴木頴介: "噴火湾海底堆積物の鉛210堆積年代と昭和新山の形成"フィッション・トラック ニュースレター. 通巻・16. 31-33 (2003)
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[Publications] 本多照幸, 川村 茂: "中性子放射化分析による東京湾海底堆積物中のランタノイド,トリウム及びウランの定量とその挙動"日本放射化学会誌(別冊). 4. 48 (2003)
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[Publications] 鈴木健二, 本多照幸: "愛知県内15地点における浮遊粒子状物質の中性子放射化分析"日本放射化学会誌(別冊). 4. 49 (2003)
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[Publications] 本多照幸, 石田幸三, 五十嵐康人, 青山道夫, 廣瀬勝己: "2001年つくば降下物における主要並びに微量元素濃度とその特徴"第50回日本地球化学会年会講演要旨集. 2003. 1 (2003)
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[Publications] 本多照幸, 木村賢一郎, 森本隆夫: "東京湾,陸奥湾および噴火湾海底堆積物における主要並びに微量元素の分布と挙動"日本海水学会誌. 57・3. 166-180 (2003)