2003 Fiscal Year Annual Research Report
D型アミノ酸を指標にした細菌による海洋難分解性溶存態有機物の生成機構の解析
Project/Area Number |
15510013
|
Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
柳 勝美 九州産業大学, 工学部, 教授 (10191149)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱 健夫 筑波大学, 生物科学系, 助教授 (30156385)
|
Keywords | D型アミノ酸 / 難分解性溶存態有機物 / 細菌類 / ^<13>C-標識有機物 / ^<13>C-トレーサー法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、細菌類だけが固有に生産するD-型アミノ酸を指標にして、植物プランクトンによる一次生産有機物の分解・変質過程における細菌類の役割と寄与を解析することにより、梅洋難分解性溶存態有機物の生成機構を解明しその海洋炭素循環における炭素シンクとしての役割を考察することである。そのために、人工海水(181)に無機栄養塩類と東京湾表層のろ過海水(GF/F:0.7μm,含細菌類:21)を添加した後、細菌類の増殖基質として全炭素原子が^<13>Cで標識されたグルコース(1mgC/l)を加えて27℃の暗条件下で90日間培養した。一定時間毎に試水を採り、細菌類細胞数の計測とヌクレオポアフィルター(0.4μm)を通過したろ液の有機態炭素濃度(DOCおよびDO^<13>C)の測定から^<13>C-標識グルコースの消長を追跡すると共に、ガスクロマトグラフ(GC)およびガスクロマトグラフ/質量分析計(GC/MS)によって^<13>C-標識溶存態アミノ酸の消長、特に細菌によるD-型アミノ酸の生産過程を解析して、細菌による溶存態有機物分子への変換過程を考察した。 培養初期では細菌類の急激な増殖(細胞数:4日目で33倍)を反映してDO^<13>Cは初期濃度(1mgC/l)の約30%にまで激減したが、それ以後は緩やかな減少傾向で推移し90日目でも18%が残存した。GC/MSによる解析では、分子中の炭素が全て^<13>Cから成るD,-L-AlaおよびD-,-L-Valがいずれの試料からも分離・検出されたが、それらは^<13>Cグルコースから細菌類によって生成された後、溶存化したことを示す証拠であった。それらの^<12>C-アミノ酸との相対濃度は培養初期に急激に増大し、それらは短時間では消失せず90日後も残存した。これらのことは、海洋における細菌類が単なる有機物の分解者としてだけではなく、難分解性DOMの生産者として重要な役割を果たしていることを示唆している。
|
Research Products
(1 results)
-
[Publications] Hama, T., Yanagi, K., Hama, I.: "Decrease in molecular weight of photosynthetic products of marine phytoplankton during early diagenesis"Limnology and Oceanography. 49. 471-481 (2004)