2003 Fiscal Year Annual Research Report
北極海環境変動に対する海洋低次生態系の応答に関する研究
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15510018
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
千葉 早苗 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球フロンティア研究システム, 研究員 (40360755)
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Keywords | 北極海 / 低次生態系 / 環境変動 / 動物プランクトン / カイアシ類 / JWACS |
Research Abstract |
本年度は、観測船「みらい」により平成14年度に実施した日本-カナダ共同北極海調査(JWACS)で得た動物プランクトン試料に基づき研究を進めた。同試料の顕微鏡による分析作業はカナダ側Fresh Water Institute (FWI)が担当しており、本年度の研究成果のまとめ及び平成16年度の北極海調査の計画策定のため3月にFWIへの出張を実施した。解析結果の概要を以下に示す。 調査海域全域において卓越したのは大型の食植性カイアシ類、Calanus hyperboreusとC.glacialisであったが、他の動物プランクトンの群集構造は西経160度付近のBarrow沖海域(以下西部とする)と西経125-140度の陸棚斜面域(以下東部とする)では異なっていた。西部ではヤムシ等肉食性プランクトンの占める割合が高いのに対し、東部では翼足類やオキアミ類等食植性/雑食性プランクトンも多く出現した。また、上記カイアシ類2種のコペポダイトステージ組成については、西部で成熟個体が卓越したのに対し東部では若い個体が多かった。特に東部海域のうら西経130度沖の現存量が最も高かった海域においては西部と比較してほぼ1ステージ分若かった。西部海域において、肉食性プランクトンの卓越はブルーム季からポストブルーム季への栄養段階構造の季節変化を示唆し、さらにカイアシ類の成熟個体の増加も同海域における夏季生物生産のタイミングが東部域と比較して早かった可能性を示している。その要因の一つとして両海域における季節海氷の後退のタイミングの違いが考えられた。つまり極域の低次生態系の生産がアイスエッジブルームのタイミングと規模に依存することを考えれば、海氷の後退のタイミングが遅い東部海域で生物季節的な遅れが起こっても矛盾はない。平成16年度はこの仮説を多角的に検証すべく現場観測、実験を実施する予定である。
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