2005 Fiscal Year Annual Research Report
北極海環境変動に対する海洋低次生態系の応答に関する研究
Project/Area Number |
15510018
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Research Institution | Independent Administrative Institution, Japan Agency for Marine-Earch Science and Technology |
Principal Investigator |
千葉 早苗 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境フロンティア研究センター, 研究員 (40360755)
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Keywords | 北極海 / 低次生態系 / 環境変動 / 動物プランクトン / カイアシ類 / JWACS |
Research Abstract |
本年度は、平成14年度と16年度に観測船「みらい」により実施した日本-カナダ共同北極海調査(JWACS)で得た解析結果に基づき、西部北極海における動物プランクトンを中心とする低次生態系の水平・鉛直分布に対する、物理的・化学的海洋環境変動の影響について成果をまとめ、国際会議にて口頭発表した(2005 International Ocean Research Conference, Paris) 動物プランクトンに関しては北極海全体で最も優先する大型の食植性カイアシ類2種、Calanus hyperboreusとC.glacialisをターゲットとし、海域毎の個体群密度、成長段階組成、安定同位体比の違いを調べた。その結果、2002年の観測からは、低次生物生産のタイミングが海域毎に異なること明らかになり、その原因として季節海氷の後退時季と規模の違いが示唆された。すなわち、この年海氷が早く後退した西経160度付近のBarrow沖海域では生産が低くポストブルームの様相を呈していたのに対し、海氷の後退が遅れて起こった西経125-140度の陸棚斜面域では9月においても高い生産が認められた。2004年の観測は、西経160度付近に位置するChukuchi Plateauをはさんで東西で同様の調査を行った結果、生物生産の規模に東西海域で顕著な違いがあることがわかった。本結果においては季節海氷の影響は認められず、北極海特有の複雑な表層の鉛直構造により東西の成層度合いが変化し、西側では富栄養な、東側では貧栄養な環境が形成され、生物生産に影響を与えたことが考えられた。北極海では近年海氷面積の減少傾向が顕著である。本研究の結果は、海氷の変動とそれに伴う海洋構造の変化が、生物生産の高い夏季北極海において低次生態系にインパクトを与え、有用水産資源を含む高次の生態系に影響を与えるのみならず、生物ポンプの効率も左右する可能性を示唆している。
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