2004 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化により増加が予想される土壌有機物分解量に及ぼす腐植保持容量の影響評価
Project/Area Number |
15510021
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田村 憲司 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教授 (70211373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 照雄 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (20094170)
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Keywords | 土壌 / 土壌有機物 / 気候 / 温暖化 / 非晶質アルミニウム / アルミニウム-腐植複合体 |
Research Abstract |
屋久島に分布する火山灰由来土壌を対象に、土壌断面調査に基づいて、一般理化学性、腐植の形態および粘土鉱物組成の分析を行った。調査地点は、火山ガラス含量が20%以上を示すA層を持つ断面を選定した。安房川右岸(標高120m)、ヤクスギランド(標高1050m)、花山歩道(標高1150m)、淀川小屋(標高1450m)、宮之浦岳(標高1920m)を研究対象とした。安房川右岸の周辺はスダジイの優占する常緑広葉樹林であった。ヤクスギランド、花山歩道、淀川小屋の周辺はスギ-ツガの優占する針葉樹林であった。宮之浦岳の周辺はヤクシマダケの優占する草原であった ヤクスギランドを除くすべての断面で、AB層のAlo+1/2FeoがA層を上回り、ヤクスギランドにおいてもA2層のAlo+1/2FeoがAl層を上回ったことから、AlおよびFeの溶脱が示唆された。どの断面も、火山灰を主たる母材としているにも関わらず、安房川右岸以外の断面は、明らかに低いAloの値を示した。これらの断面では強度の溶脱作用が進行していることが示唆された。また、安房川右岸を除いたすべての断面でAlp/Aloが0.5以上であり、特に花山歩道、淀川小屋、宮之浦岳の三断面はAlp/Aloが高く、非晶質アルミニウムの多くの部分がAl-腐植複合体として存在していることが考えられた。Sioが0.6%であったのも、安房川右岸のBA層およびBw1層のみであった。安房川右岸以外の地点ではSioの値が非常に低く、アロフェンやイモゴライトが、主要な粘土鉱物ではないことが示唆された。 すべての層位でバーミキュライト、バーミキュライト-クロライト中間種鉱物、7Åカオリン鉱物が認められた。14Å-10Å混層鉱物は、ほぼすべての層位で存在していた。イライトは、安房川右岸では2C層で認められるのみであるが、その他の断面ではすべての層位で存在した。淀川小屋では、クロライトが認められなかった。火山灰の影響が弱いと考えられる淀川小屋の2BC層では、バーミキュライト>バーミキュライト-クロライト中間種鉱物であり、クロライトが認められなかったのに対し、火山灰の影響が強いと考えられる層位ではバーミキュライト≦バーミキュライト-クロライト中間種鉱物であり、クロライトがしばしば認められた。このことから、バーミキュライトが火山灰中の火山ガラスなどに由来するAlを層間に取り込み、クロライト化していることが示唆された。 屋久島において非アロフェン黒ぼく土が生成した理由として、花崗岩や泥岩といった、火山灰以外の母材の混入によってAlの供給量が火山灰のみを母材としている場合に比べて少ない条件に加え、Al-腐植複合体の形成、降雨によるAlの溶脱、2:1型粘土鉱物の層間へのAlの固定といった、Alの挙動により、AlとSiの結合が阻害され、アロフェンの生成が抑制されていることが考えられた。
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Research Products
(2 results)