2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15510022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松橋 隆治 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (80229517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 好邦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (30302756)
野村 明良 東京大学, 大学院・工学系研究科, 技術専門職員
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Keywords | 京都メカニズム / モンテカルロシミュレーション / ファイナンス / 証券化 / CDMボンド / 排出権 / コンジョイント分析 |
Research Abstract |
2005年2月16日に京都議定書が発効したことにより、「京都メカニズム」の活性化が地球環境への改善のみならず、日本の議定書遵守のためにも必須条件となった。京都メカニズム活性化のためにはプロジェクトに伴うリスクを緩和することが重要であるが、そのためにCDMなどの京都メカニズムのファイナンスを証券化することを提案している。今年度は我々が提案した「排出権付プロジェクト債」(CDMボンド)のプライシングを行うと共に、政策面からのCDM支援のシナリオ分析や、市場におけるCDMリスクのヘッジ方策を分析した。 (1)上述したように本年2月16日に京都法定書が発効した。これにより、京都メカニズムを巡る周辺環境が大きく変化した。日本政府内では、議定書の遵守に向けた緊急の政策パッケージが鋭意まとめられている最中であり、その中には京都メカニズムの支援策も当然含まれている。我々は政府関係者、政府に近い研究所の研究員および本問題に造詣の深い大学の研究者にアンケート調査を行い、京都メカニズムに関する今後の政策がどのように推移するかを分析した。分析にはクロス・インパクト法という手法を用い、専門家のエクスパートジャッジメントに基づき、その確率的矛盾を最小化することにより、定性的事象の生起確率を推定するものである。例えば、CDMによって得られた排出権(CER)を政府が買い取る制度を創設するか否かは、CDMプロジェクト実行者にとって重大な問題である。本制度によって、CER価格のリスクがなくなるか、もしくは大幅に低減されるからである。クロスインパクト法による推計をおこなった結果、上記のようなCERの政府による買取制度が創設される確率は、議定書発効により、大幅に高まり、100%近いことが判明した。これはCDMプロジェクトの遂行にとっては、リスクが避けられるという意味で大きな発見である。続いてリアルオプションの手法に基づき、CDMプロジェクトのリスクと実行の可否について分析した。そこでは、上記のようなCER買取制度がある場合とない場合のプロジェクト実行可能性の高まりについて、リアルオプション手法に基づき定量評価をおこなった。 (2)投資家へのアンケート調査とコンジョイント分析の結果に基づき、各CDMプロジェクト毎のデフォルトリスクに基づく、CDMボンドの格付けを行い、この格付け毎のCDMボンドのプライシングないしは、イールドスプレッドを算出した。次に、現実の証券市場における格付け推移行列などのデータを用いて、プロジェクト存続期間中の格付けの変化を動的、確率的に推定し、各CDMボンドの総合的な価値および等価利回り率を算定した。さらに、複数のプロジェクトのポートフォリオを組んだ場合のデフォルトリスクやプライシングへの影響を分析した。
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Research Products
(6 results)