2003 Fiscal Year Annual Research Report
環境カドミウム曝露のリスク評価に関する腎障害の長期追跡研究
Project/Area Number |
15510025
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
青島 恵子 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (20126501)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 輝隆 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (80115162)
寺西 秀豊 富山医科薬科大学, 医学部, 助教授 (40115184)
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Keywords | カドミウム / 近位尿細管機能異常 / β2-ミクログロブリン / 米中カドミウム / 疫学調査 / イタイイタイ病 |
Research Abstract |
富山県神通川流域カドミウム(Cd)汚染地域住民を対象に,尿細管障害の予後に関する17年間の長期追跡調査を実施し,環境カドミウム曝露のリスクを検討した。2003年6月に,同地域の5地区11集落および熊野川水系の1地区3集落に居住する,大正3年(1914)から昭和4年(1929)生まれの74〜89歳の男性住民全員(103人;汚染地区90人,対照地区13人)を対象に,早朝尿,喫食飯米ならびに自記式質問票を収集した。参加者は汚染地区72人(80%),対照地区13人(100%)であった。糖尿病3人,腎臓病2人,対照地区住民のうちCd汚染地域居住歴を有する1人の合計6人を除外し,79人(汚染地区68人,対照地区11人)について解析した。尿Cd,β_2-ミクログロブリン(β_2-m),α_1-mの地区別分布は,汚染地区住民において有意に高かった。調査時の飯米中Cd濃度は,対照とCd汚染地区間には有意差はみられなかった。神通川流域では,汚染された水田土壌を復元する事業が1980年より実施されており,2006年に完了の予定である。したがって,尿Cdの高値は,調査時点における曝露によるものではなく,これまでの異常な曝露による腎組織への蓄積による結果と考えられた。尿細管障害の指標である尿β_2-m値の地区別幾何平均値を1986年の成績と比較すると,対照地区(2003年,0.23mg/gCr;1986年,0.30mg/gCr)であったのに対し,Cd汚染地域の1地区(J)では,1986年の4.70mg/gCrから2003年には10.76mg/gCrへと上昇しており,尿細管障害の進行・悪化が認められた。すなわち,ひとたび体内に異常に取込まれたCdによる腎障害は,環境改善が進み,環境からの曝露が軽減しても進行すると考えられた。
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