2006 Fiscal Year Annual Research Report
小繰り返し地震の解析に基づく三陸沖における大地震と津波地震の発生過程の解明
Project/Area Number |
15510145
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松澤 暢 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (20190449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 知己 東北大学, 大学院理学研究科, 助教授 (30281968)
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Keywords | 繰り返し地震 / 相似地震 / 準静的すべり / 余効すべり / 固有地震 |
Research Abstract |
大地震の余効すべり等の擾乱があると,深部の小アスペリティで発生する小繰り返し地震の発生間隔が短くなるが,その場合,強度が十分回復しないうちに強制的にすべらされることになるためにすべり速度が普段より遅くなり,また小アスペリティ破壊前の前駆すべりのパターンが普段と異なるために地震性すべりの領域も普段と異なることを,数値シミュレーションによって明らかにした.このことは,余効すべり中では小繰り返し地震の高周波側の波形の相関が劣化することを意味する.実際に小繰り返し地震の波形を調べたところ,再来間隔が短いほど,また高周波ほど波形のコヒーレンスが劣化していることが確かめられた. 一方,海溝近くの浅部の小アスペリティの場合には,逆に普段スローイベントを起こしているようなところでも,大地震の余効すべり等の擾乱が大きければすべり速度が大きくなり,地震性すべりとなりうることも数値シミュレーションで確かめられた.これは浅部では有効法線応力が小さいために,余効すべりの伝播速度が大きく,このために小アスペリティでの応力の増加レートが大きくなるために不安定性が増加するためであると考えられる.海溝軸近くでは,大地震の余効すべり中にのみ活動が見られる小繰り返し地震のグループが多いが,これらは普段はスローイベントを起こしていて,余効すべり中のみで地震性すべりを起こしている可能性がある. これまで,陸に近い領域では小繰り返し地震によって推定された余効すべりの大きさはGPSによる推定量より小さいことが多く,また海溝近くでの小繰り返し地震の積算すべりはプレートの相対速度から推定される量よりも小さいことが経験的に知られていたが,上記のシミュレーション結果は,両者の理由を統一的に説明するものであり,この知識を踏まえて小繰り返し地震の選択基準を見直すことにより,プレート境界の準静的すべりの推定の信頼度を向上させることができると期待される.これは大地震の中期予測の精度向上にもつながる重要な成果である. また,釜石沖の小繰り返し地震のグループについて,相対震源と断層サイズを高精度で推定したところ,M4.8の地震はNadeau and Johnsonのスケーリング則で説明できるものの,それ以外の小繰り返し地震は通常のスケーリング則のほうが適合度が高いことが明らかになった.さらに,M4.8の地震の断層面の中心付近に小アスペリティが存在していることが明らかになるなど,アスペリティの階層性も明らかになった.この結果は,プレート境界型大地震と,それより一回り小さい地震との関係を理解する上で大きな示唆を与えてくれている.
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