Research Abstract |
本研究の目的は,(1)港湾施設の耐震基準の策定における経済評価手法を確立したうえで,(2)従来の港湾施設基準に潜在する社会的なリスク評価特性を計測し,これまでの研究代表者らによる計測結果との比較も交えて,(3)港湾施設の耐震設計におけるカタストロフ・リスク等の取扱手法について検討を行う,の3点であった. これに対応し,研究成果報告書は,以下のような構成となっている.はじめに,第1章で(1)港湾施設の耐震基準の策定における経済評価手法の確立を行い,つぎに,第2章で(2)従来の港湾施設基準に潜在するリスク評価特性の計測,および(3)港湾施設の耐震設計におけるカタストロフ・リスク等の取扱手法についての検討を行った.さらに,第3章で(1)で確立した手法の適用例として,地震被災時ではなく常時の例ではあるが,岸壁の信頼性設計法を提示した.ここでは,全国各コンテナ港湾の各バースを対象に算出した迂回輸送による被害額について,バース水深別の平均値だけでなく,その分散(σ)を算出して,平均値+σ,平均値+3σの被害額をもとに目標安全性指標を検討した.これは,目的(3)の検討に関連し,カタストロフィックな性質を持つリスクに対する,実務的・現実的なアプローチと解釈することもできるだろう.本研究課題の成果は,現在見直しが行われている港湾施設の設計基準に一部考慮されるなど,一定の成果を挙げているものの,第1章の最後でも触れたように,本交付期間内にすべての課題を克服したわけではない.特に,本研究課題の遂行中に明らかとなってきたのは,冒頭の目的の1番目に掲げられている,「港湾施設の耐震設計における経済評価手法の確立」についても,様々な観点から再検討の余地があるという点である.このような状況を踏まえ,研究代表者らは,特に上記問題点に着目し,引き続き研究を進めていく予定である.
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