2004 Fiscal Year Annual Research Report
インドにおける経済自由化と都市労働者-長期的な生活設計構築のための社会学的研究-
Project/Area Number |
15510207
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
樋口 里華 九州国際大学, 国際商学部, 講師 (40330956)
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Keywords | インド / 都市 / 経済自由化 / 生産労働者 / 合理化 / 世帯戦略 / 失業 / インフォーマル・セクター |
Research Abstract |
本年度は、99年に実施した調査対象者のうち、追跡調査未実施の2グループ(104名)を対象にインタビューを行った。99年当時、(A)稼動工場で正規雇用されていた現役労働者、(B)(A)と同一工場の「希望」退職者が対象である。産業政策と都市政策の大幅な転換に伴い、対象工場も合理化を推進し、2004年10月に労使が閉鎖に合意した。閉鎖前から多くの労働者が「希望」退職し、就業中の労働者も所属部署の閉鎖と共に「希望」退職することになっている。こうした状況の中で、インタビュー調査などから得た知見は下記の通りである。 (1)閉鎖に関する労使協定では、労働者は、(a)「希望」退職、(b)操業を続ける近隣の第2工場への移籍、のいずれかを自由選択できるとしている。しかし、経営側と労組の両方からの移籍希望に対する心理的圧力により、大半の労働者には事実上(b)の選択権はない。 (2)(A)には厭世観と無力感が強く、さらに新たに就業するのが困難であるため、求職・就業意欲が低く、無気力になる傾向がある。退職直後は高額な退職関連の諸費用が支給されるため、相対的には経済的問題はないが、長的には経済問題が生じる可能性が高い。 (3)(B)のうち、定年間際に退職した場合には社会経済的に大きな問題がみられない世帯が多い。しかし、退職強要や借金返済などの事情で退職した場合には、経済困難を抱える世帯が大半である。退職後に多く見られる永住帰郷は、居住環境のよい故郷で余生を過ごすため、または物価の高い都市では生活困難なためである。後者には帰郷後、現金収入を求めて都市に「出稼ぎ」にくるケースもみられる。 (4)両グループとも、経済的状況は次世代に負うところが大きく、経済状況は子弟の教育水準や娘の就業と関係が深い。(A)の場合、退職関連金の運用方法による経済状況の差異が非常に大きく、運用に関する教育が必要である。
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