2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15510211
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
竹村 和子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (10155046)
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Keywords | 公共圏 / 親密圏 / ジェンダー理論 / 暴力 / 英語圏文学 / 文化 / 表象 |
Research Abstract |
昨年度にひきつづいて、《親密圏/公共圏》の考察を、両者のインターフェイスに発生する「暴力」に焦点をあて、理論と表象研究の両面から取り組んだ。具体的には、以下の9点である。 (1)自己の成立に不可避的に織り込まれる攻撃性・破壊性を理論的に追求するにあたって、フロイトのマゾヒズム論を再考し、レオ・ベルサー二の言う自己破砕の欲望が旧来の親密圏と公共圏の分別をなし崩しにする傾向を、『ソドムの市』および『ドッグヴィル』の分析をもとに論じた(「マゾヒスティック・エイジェンシーの(不)可能性」)。 (2)ソウルで開催された日韓女性史再考会議において、資本主義社会とは別様の親密圏/公共圏を形成した19世紀米国の実験的共同体と、それを模倣した日本の場合のジェンダーの位置づけの相違を論じ、とくに日本の場合には植民地主義との関連で屈曲したジェンダー配置が繰り広げられることを論じた(内堀奈保子との共同研究「『新しき』共同体とジェンダー/セクシュアリティ」)。 (3)ジュディス・バトラーの現在的意味を、とくに法と暴力、自由と規律、批判と占有、個と公の面から再考し、国家主体を超えた国際的な共社会性が存在しうるかという問題を論じた(「未来のバトラーとの対話に向けて」「攪乱的なものの倫理」など)。 (4)文学表象を直接に扱うものでは、テロリストの身体性や、父なるものを欠いた文体、Nathaniel Hawthorneの批評における個人的伝記と社会性の関係などについて論考した(「<テロリストの身体>のその後」「ヘミングウェイと志賀直哉」"What if....:Life, People, Society")。 (5)日本学術会議において、生物学とジェンダー研究の接点が、現在の性の非対称性についてどのような解放的可能性を現出しうるかについて考察した(「性の堤喩化からの脱却にむけて」)。 (6)以上の研究のために、書籍や雑誌論文の収集・整理に努めた。
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Research Products
(10 results)