2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15510214
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (20262941)
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Keywords | 科学史 / 啓蒙主義 / ジェンダーと科学 / ニュートン主義 / デュ・シャトレ夫人 / フォントネル / ラヴワジエ夫人 / ジャンリス夫人 |
Research Abstract |
本年度はまず、昨年に引き続き、ジャンリス夫人の技術模型の調査・研究を行った。彼女の教育理念は第一作である『アデールとテオドール』に述べられている、実用と理論の一致という古典的なものなのだが、これを実践に移したところに、ルソーとは違ったジャンリス夫人の新しさがある。昨年はジャンリス夫人の専門家であるパリ技芸博物館のフェリオ教授を招聘したが、今年は申請者自らがパリに行き、その模型を実際に確認し、その元になった『百科全書』の図版との直接比較を行った。その結果、この模型は実物を忠実に写し取ったというだけではなく、大きさ、部品のまとめ方などにも、子供の教育という観点から非常に細かい配慮がなされていることがよくわかった。「子供」の教育というのは18世紀のみならず現代の女性にとっても野心の隠れ蓑であり、また現実に接触しやすい分野であることから、ここには男性であるルソーには絶対にまねのできない、実践的な配慮がなされている。 そのほかには、フォントネルのイタリア版、にあたるアルガロッティの『ご婦人方のためのニュートン主義』ドイツ版であるフォルメイの『麗しきヴォルフ主義者』の解析を行った。主題がデカルトからニュートン、ヴォルフ(ライプニッツ)に変わっても、「語る男と聞く女」という構図は同じで、この二冊の時代にはかなりの教養を持ち、自ら本を書く女性が出現していたにもかかわらず、そのようなことを思わせる気配はこの男性作者の本には存在しなかった。ただ、国による違いがあり、フォルメイのものは、フォントネルやアルガロッティに存在する、科学と恋愛を組み合わせるという要素がない。これは女性による社交界の支配という伝統がなく、むしろ市民階級が強かった当時のドイツの状況を反映しているものだと思われる。また、アルガロッティのものにはフランス語訳があるのだが、ここでの女性像はオリジナルのイタリア語版より、知性があるように描かれている。これもまた、フランスの文芸共和国における女性の地位を反映しているものだと思われる。 最後に、今年はパリにおいて技芸博物館だけでなく、アカデミー古文書館でラヴワジエ夫人の『化学論集』の序文の草稿分析を行った。それによると彼女は当初、印刷されたものよりもはるかに亡夫の業績を強調する意志のあったことがわかった。また、何者かとの間で、添削作業が行われた形跡があり、その筆跡が誰のものか特定するにはいたらなかった。来年度はぜひこれを特定したい。そこから、女性が知的作業に関わるに際しての、ある特徴的な態度を引き出すことが可能だと考える。
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Research Products
(6 results)