2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15510214
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学研究科, 助教授 (20262941)
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Keywords | デュ・シャトレ夫人 / ラヴワジエ夫人 / ジャンリス夫人 / ピカルデ夫人 / ニュートン啓蒙 / ジェンダー |
Research Abstract |
今年度はデュ・シャトレ夫人とラヴワジエ夫人、ピカルデ夫人の科学業績について特に研究した。 デュ・シャトレ夫人に関しては、2006年3月から6月までパリの国立図書館で特別展が開かれることもあり、そのカタログ作成にも携わった関係から、特に歴史上初の男女平等な科学論争であるシャトレ=メラン論争について考察した。これは通常デュ・シャトレ夫人の科学啓蒙書である『物理学教程』(1740)第21章が論争の発端ということになっているが、実際はそうではなく、1738年度の科学アカデミーの懸賞論文である「火の本章と伝播について」ですでにデュ・シャトレ夫人とメランの学説の対立は始まっていたことがあきらかになった。他の主題としては、彼女の最後の妊娠・出産についての俗説と、先の活力論争でも問題にされる、彼女の科学思想の変化にかんする俗説という二つの話が、一見その性質がまったく異なるにもかかわらず、ジェンダーという視点を導入すると共通の地盤を持っていることが判明した。 ラヴワジエ夫人に関しては次のことが明らかになった。昨年度科学アカデミー古文書間で、研究代表者である川島が『化学論集』序文の草稿にラヴワジエ夫人以外の人物の書き込みを発見したが、その作者を特定できなかった。今年度は、これがサミュエル・デュポン・ド・ヌムールのものであることが、ラヴワジエ委員会事務局長のパトリス・ブレ氏の協力の下明らかになった。これで以前からデュポン協力説を唱えていたポワリエ氏の主張が正しいことが突き止められた。今後さらにこの2人の関係を明らかにしたい。 なお、川島は今年度ブレ氏を日本に招聘し、ブレ氏からピカルデ夫人についてのレクチャーを受けた。そこから判明したのは、ピカルデ夫人は従来考えられている以上に、その翻訳技術を化学革命の普及に生かしたということである。ピカルデ夫人が翻訳した化学論文はおびただしい数にのぼり、翻訳の量だけを考えるとラヴワジエ夫人の比ではない。このことが今日まで知られなかった理由として、ピカルデ夫人がディジョンという地方にいたこと、恋人がラヴワジエよりは知名度の低いギトン・ド・モルヴォーであったことなどが考えられる。
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Research Products
(6 results)