2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15510215
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
持田 ひろみ (曽根 ひろみ) 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10179385)
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Keywords | 近世史 / 法制史 / ジエンダー / 刑事裁判 / 主従 / 親子 |
Research Abstract |
本年度は、(1)刑事責任が性差・身分・階級と絡み合った日本近世法のジエンダー秩序がいかなるものであったのかという理論的仮説を得ることをめざし、幕府による刑事裁判事例の分析を行うこと、(2)諸藩(とりわけ東北地方の)の刑事法・刑事裁判の判例集を収集することを目標とした。 (1)については、以下の仮説を得た。少なくとも刑事法制においては、性差より「主従」「親子」という社会的身分差のほうが決定的である。主殺し、親殺しは、殺害される主人や親の性差(女主人か母親か)に関わらず、また殺害主体(犯人)が男か女かに関わらずまったく同等に厳罰に処される。被害者・加害者の性差は問題とされず、両者がいかなる社会的身分的関係(「主従」「親子」など)にあったかによってのみ処罰されるということである。この点は、近代法のジエンダー秩序と決定的に異なるところである。 (2)については、秋田・佐竹家、盛岡・南部家、鳥取・池田家所蔵の藩政史料の調査に行き、以下の刑事法・刑事裁判判例集を収集してきた。 ・秋田・・・「刑罰式」「刑罰式附録・中」「刑罰式附録・下」(秋田県立公文書館所蔵) ・盛岡・・・「刑罪諸士」「南部藩刑罰襍集」(ただしこれは原資料を翻刻したガリ版刷りのもので原本見つからず)(岩手県立図書館所蔵) ・鳥取・・・「刑罰之部・一」「刑罰之部・二」(鳥取県立博物館所蔵) 今後、(1)の仮説を(2)の史料で補強し、さらに緻密な理論的検討を加えたい。
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